「んだよ、お前ら。予算の話は終わったはずだろうが」
「それはまた今度だ。ナイル、ここにサインをしてくれ」
「あー?うおっ、おい!これ、婚姻届じゃねぇか!」
「紹介するよ、妻のナマエだ」
「おい、待て!ナマエのことはよく知ってるつもりだ、同期だからな。だが付き合ってたなんて知らなかったぞ」
「ナイル、ごめん、付き合ってないの…」
「……まあ、このご時世だからな、色々なこともあると思うが、上司である男と結婚させられるのも」
「失礼なことを言わないでくれ。恋愛結婚に決まっているだろう」

意味が分からないといった顔をしているナイルだけれど、そんなの私だって同じだ。
もう意味なんて求めてはならない。

「いきなりプロポーズされて、今日…」
「今日!?つーかステップ飛ばしすぎだろ!?お前ら…あのなあ…」
「ナイル、大丈夫、言いたいことは非常によく分かるから」
「誰かあいつの暴走を止められねぇのかよ…まあ、お前も大変だろうが、頑張れよ」

頼むから俺は巻き込んでくれるなよ、なんて言いながらも彼は保証人の欄に署名してくれた。
昔からいい人ではあったけれど、ミケと違うのはいつも巻き込まれ損をしていたところか。
妙なところで要領の悪い彼が、またいい味を出している。

「そうだ、新婚夫婦に渡すのも変だが、ナマエが兵役中の間は使っとけよ」

キャビネットの奥を漁り始めたと思えば、小箱を投げてエルヴィンに渡した。
その箱の文字を見た瞬間、目眩がした。

「絶対ナイルの棺桶にゴキブリ入れてやるんだからね!」
「そんなに喜ぶなっつーの」
「そうだよ、ナマエ?貰えるものは貰っておかないと」
「これだから色男は…エルヴィン、テメェのソレはアホみたいにデケェから手加減してやれよ」
「うん?善処するよ」

エルヴィンもエルヴィンで、何事もなかったかのように笑って…
これが知らない人ならまだしも、昔から知っている人間に、夫婦の生活を知られるのは耐え難いものがある。

っていうか何をナチュラルにあんなものを執務室に置いておくんだあのヒゲは!

その後もシーナであれこれ手続きを終えて、二人でエルヴィンの私室に帰った。


「仕事の引き継ぎが終わるまでに家を探そう、いつまでもここに居るとあまり実感が湧かないからね」
「そうだね、じゃあ私、シャワー浴びがてら荷物取ってくるね」
「シャワーはここで浴びればいいだろう?荷物だって明日でいいし」
「でも、せめて着替えとか…」
「君はシャワーを浴びたら何も纏う必要なんて無いだろう?」

言い方こそ遠回りだけど、かなり直球なお誘いだ。
待って、昼まで友達だったのに急に、そんなこと…
いや、普通を求めてはいけない。
相手はエルヴィンだ、話なんて通じやしない。

「分かった、先に借りるね?」
「タオルや石鹸は好きに使ってもらって構わないからね」

どうしよう、エルヴィンはとても余裕そうだ。
私なんてナイルが投げて寄越したコンドームの箱を見るだけで顔が火照ったのに。

こんなことならナナバが貸してくれた雑誌もちゃんと読んでおけばよかった。
エルヴィン、幻滅しないかな?

いつもより念入りに身体を洗ったけれど、自分からエルヴィンの香りがして落ち着かない。



「ナマエ、お待たせ」

私と入れ替わりにシャワーを浴びたエルヴィンは、バスローブ姿で戻って来た。
思わず見惚れてしまうほどに格好いい。

濡れてぺたんと崩れた髪型も、水の伝う胸板も、とにかく作り物みたいで現実味がない。

「エルヴィン…その、実は、」
「ナマエ?」
「私、今までその…こういうこと、したことなくて…」
「緊張しているのは私も同じだ、大丈夫」

髪を混ぜるように撫でて、そのまま頬に添えられた手は大きく、とても安心できる。
彼に大丈夫だと言われたら、本当に大丈夫なような気もするし、経験がないことで笑われたり嫌な顔なんてされなくて良かったと思う自分もいる。

「あ、ナイルに貰ったやつ、どこやったっけ?」
「…今その話をするのかい?明日でいいんじゃないか?」
「明日?でも私、まだ働きたいからその間だけでも避妊したいというか…」
「それは約束しただろう?私も君と同じ意見だ」
「じゃあ、別のものがあるの?」
「今から朝食の心配だなんて、ナマエは少し空気を読んだ方がいいぞ」
「はあ?」

正真正銘の初夜、何が悲しくてベッドの上で朝食の話をしなければならないのか。
変な声を出して顔を歪めれば、エルヴィンも意味が分からないという顔をする。

駄目だ、埒が明かない。
ベッドのすぐそばに置いてあったエルヴィンの鞄から、元凶である小箱を出して彼に突き付けた。

「これ、着けて欲しいって言ったの」
「徳用キングサイズ、ってチョコレートか何かじゃないのか?これ?」
「ゴムよ、言わせないで…」
「ナマエ、これは何に使うんだい?」
「まさかエルヴィン、それ、使ったことないの…?」
「ああ、初めて見るよ」

ちょっと、引いたというか。
それは流石に女性に対するマナー違反も甚だしいのでは?
いや、ペッサリーとか入れてたのかな…
考えたくないけど、妊娠させたこととかあるのかな?
あるなら、産んでもらったのかな?それとも…

「…エルヴィンは、こういうことする時には、女性側に避妊具を着けてしてたって解釈でいいかな?」
「これは避妊具なのか?」
「…ごめん、私ちょっと、」
「待ってくれ、ナマエ!私のリードが悪かったなら教えてくれ。逃げないで欲しい」
「そんなこと言ったって、怖いよ…私、初めてなんだもん…」
「私だって、初めてだ…」

避妊具の存在を知らなかったエルヴィンに、今まで私の知らない間に妙に擦れた大人になった部分を感じて怖かった。
のに、ベッドから降りようとする私を止めるエルヴィンの手は微かに震えている。

「すまない、勉強してきたつもりだったが…ナマエを不安にさせるくらいなら、最初から言えば良かった」
「なんで嘘なんてつくのよ…」
「ミケがあまり公にするなと言ってきたのと、ナイルがいつもそれをネタにからかってくるから、これは恥ずかしいことなんだと思って…」

あのヒゲ共、今度見かけたら締める…
特に黒髪の方は永久脱毛もオプションで付けてやる。

「エルヴィン、経験が無いのは私だって言いにくかったけど、でも初めてがあなたで良いと思ってる」
「初めてなだけじゃない、最後でもあるから唯一だ。二人で、私たちのペースで進んでいこう」

エルヴィンのキスは優しくて熱くて、ナナバの言う下手なキスじゃないんだろう。
歯も当たらないし、舌が入ってきても変な感じはしない。

頭がぼーっとするほど口付けた後、二人でベッドに沈み込んだ。

「私は本と伝聞でしか知識がないから、良いとか痛いとか好き嫌いも教えてくれると助かる。ナマエに痛い思いをさせたくないし、なるべく気持ち良くなってほしいから」
「エルヴィンも教えてね?そう思ってるのは私も同じだから」

首筋を伝って胸元まで、舌を這わせて時折吸い上げられる。
ちくりと痛むけれど、それが何なのかは大体分かる。

「ナマエ、痛い?」
「ちょっとだけ、ほんのちょっと」
「私にもしてくれないか?」

身体を起こされて、エルヴィンと向かい合って座る形になる。
目の前には真っ白な胸板。
筋肉質で、でもしなやかでむっちりしていて、誘われるままに口付けたけれど上手くいかない。

じゅっ、と下品な音がしてしまったけれど、3度目でようやく赤い跡がついた。
エルヴィンは子供みたいな顔をして喜んでいる。

「なるほど、少し痛いね。我慢できる?」
「できる、っていうか、そんなに…嫌じゃない…」
「ああ!可愛い!……ん?」

ぎゅうぎゅうと抱き締められたのも束の間、今度はゆっくり肩を掴まれて剥がされる。
何かを探しているかのようだったけれど、突然胸を鷲掴みされてそのまま押し倒された。

「へえ…横にしても丸い形のままなんだな」
「エルヴィ…ちょ、やあっ」
「こんなに柔らかいのに、ここだけ硬いのはどうしてなんだ?でもさっきはこんなに硬くなかった気がするよ?」

膨らみ全体をつんつんと突ついて、先端を摘ままれた。
変な声が上がってしまって、聡いエルヴィンは薄々勘付いていそうだけれど、私の口から言わせたいのだろうか?

「ほら、こうするとビクビクするのは痛いからなのかい?」
「やっ、エルヴィン…んっ!」
「甘そうな匂いがする」
「ふあ…あ、やっ!」

先端を捏ねるように押し潰されると、やっぱりみっともないような声が出る。
反対の胸にはエルヴィンの舌が這って、時々軽く歯を立てられたり吸い上げられたりして、なんだろう、お腹の奥が熱くてむずむずする。

この気持ちをなんとかこの金髪美男にも味わせてやりたくて、手を伸ばしてエルヴィンの胸の先を摘まむ。

「…ナマエ、くすぐったいよ」
「あれ?気持ち良くない?っあ!」
「残念ながらくすぐったいだけだよ?」
「ふ、あ、ああっ!」
「その声、とても好きだ。もっと聞かせてくれないか」

エルヴィンにされたみたいに、摘まんで捏ねて、引っ掻いて。
なのに彼は本当にくすぐったいだけのようだ。
こっちは変な声が漏れて困っているのに。

「ここも、触るよ」

するすると内腿を撫で上げられ、その奥で手が止まる。
つい膝を閉じると、太い両腕がそれを拒んでこじ開ける。

それだけならまだしも、顔を近付けて見るものだから、恥ずかしさで頭がおかしくなる。

「エル、見ないで…」
「ナマエ…なんだかここだけ濡れていないか?…ふむ、粘液のようだ」
「やだぁ…本当、やめ、やだっ!」
「…ナマエが本当に嫌なら勿論やめるが、どうする?」
「だって、恥ずかし…だもん…」
「喜んで却下だ」

閉じたそこを指で開いて、よく見ては指でなぞる。
一箇所だけ、彼の指が触れると気持ちいいところがある。

「ナマエは嘘がつけないね?ここだろう?」
「やあ、あっ!そこ、や…っ」
「ここも気持ち良くなると膨らむのかな?ぷっくりしてるよ」

ぬるぬるとした指のまま撫でられるのも気持ちいいけれど、軽く押さえられたり、弾かれるのも気持ちいい。
枕の端を握って目を瞑って耐えていると、下腹部にくすぐったい感覚が走る。

「やああっ、エルヴィ…いや、あっ」
「君のいやは催促だろう?」
「ちがっ、そんなとこ、ひゃああ!」

自分の身体なのに、腰が跳ねるのを抑えられない。
下腹部に当たったあれはエルヴィンの前髪で、彼は先程まで手で触れたところを舌でも触れてきた。
ちょっとざらざらしていて、とびきり熱い彼の舌に、やっぱりお腹の奥が熱を持つ。

「エルヴィン、お腹、変だよ…」
「痛いか?それとも気持ち悪いか?」
「違う…なんだかとても熱くて、むずむずする…」
「位置からして、この中だろうけれど…」

そこを使って交わり合う、というのはお互い知っている。
なんだか触れてはいけないような場所のようで、少し怖い。

「指を入れてみるけれど、痛かったら言ってくれるか?」
「うん…んっ、う……」

痛いか痛くないかで言えば痛い。
けれど、痛みよりも圧迫感というか、押し広げられる感覚の方が近い。

「っ、ナマエ、この締め付けは君の意思で緩めることはできるか?」
「無理…エルヴィンの指、太いし…」
「なるほど、無意識な上に敏感らしい」
「エルヴィン、その奥がむずむずするの…」
「もっと奥かい?」

中を広げる為に壁を擦っていた指が根元まで埋められる。
思っていたより痛くないけれど、もうあと少しで届きそうな感覚で呼吸すら苦しい。

「指、増やしても大丈夫そうかな?」
「ダメなら言うから…」
「君は頼もしいね、素敵だ」

額に軽いキスが落ちてきて、それに気を取られていると下腹部の圧迫感が増す。
手加減してよ、と訴えると、まだ2本なんだけど、と返される。
忘れた頃に指を飲み込んでいる部分のすぐ上の突起を親指で撫でられて、すると更に奥まで指が入り込む。

何回それを繰り返していたのか、指は3本に増えていた。

「も、大丈夫…かな…」
「指が3本では少し足りないかも知れないな」
「決して華奢じゃないでしょ、その指は」
「でも、これと比べたら全然足りていないだろう?」

そう言って手を導かれた先には、信じられないものがあった。

「なに、これ…」
「恥ずかしながら、私の…それだ」
「いやいやいや、聞いてない、こんなに大きいなんて聞いてない、知らない!」
「あまり人様と比べる部位ではないが、確かに一般的でないとは言われるかな…」

手の中でどくりと脈打つそれは最早凶器だ。
私だって処女とは言え年頃の女の子だったりもしたんだ、色々な話は聞いている。

兵団の食堂で「バナナくらいだった」なんて聞いたこともあるし、それを聞いたナナバがご立派だと呟いたのも聞き逃さなかった。
ミケやナイルが酔っ払ってエルヴィンのそれが超大型だと笑っていても、私はバナナくらいかと思っていた。

が、私の手にあるこれは何だ。
バナナなんてそんな可愛らしいものじゃない。

巨人で言うならエレンがバナナくらいだろう。大きいね。
でもエルヴィンのそれは紛れもない超大型で、残念なことに恐らく奇行種らしい。

「これは限りなく不可能に近いよ、エルヴィン?」
「そう言われると覆したくなるのが私の性だと知っているくせに、狡いな」
「いや、物理的に無理だよ…っ!なんで、もっと、大きく…?」
「ナマエが握るからだろう」
「これ、マックスじゃないの?」
「8割と言ったところか」
「やだやだやだ!無理だよ…」

エルヴィンのあの男らしい指が3本入るだけで、自分を褒めてあげたいくらいだったのに。
下手したら手首くらいあるんじゃないのかと思うサイズのアレは無理だ、いくら彼を愛していても無理だ。

「この程度ならまだ大丈夫だと思うから、今のうちに入れてしまいたいのだが」
「無理だったら止めてくれる…?」
「ナマエを傷つけてまでしたいことなんてないよ」
「分かった…来て?」

もう一度キスをして、それから奥に熱いものが充てがわれた時、ふと我に返る。

「エルヴィン、ゴム!ゴム!」
「ああ…これか」
「…エルヴィン?まさか…」
「どこに、どうやって、使うものなのかな?」

ピリリと袋を破いたエルヴィンが、それから固まったから何と無く予想はできていた。

「ここに、こうして被せて…あ、空気入っちゃったらダメって言ってた」
「…誰に言われたんだ?そもそも何故君がこの使い方を知っているんだ?これは男性が着けるものだろう?」
「そんな顔しないでよ、ナナバとリーネが…」
「まったく、その環境の中で君が今まで純潔を守り切れたことを神に感謝するよ」

4回目でようやく装着できたそれを誇らしげに見せてくるエルヴィンが子供みたいで思わず笑ってしまう。
けらけら笑っていると、手を掴まれてエルヴィンの背に回される。

「なあに?」
「爪を立てて抉ってもいい、痛かったらそうでもしてくれないと、私は止まれないかもしれない」
「こんなに綺麗なエルヴィンの身体に傷なんて付けたくないよ」
「私だって、こんなに大好きなナマエを傷付けたくないんだよ」

唇を吸い合うようなキスをして、ぐっとこじ開けられる感覚が襲ってくる。
大丈夫、まだ耐えられる、と思っていたのに、限界は意外と早かった。

「いた、エル、いたい…」
「私も痛いが…ナマエは更に痛いんだろう、すまない」

痛がったらやめるなんて大嘘つき。
半分くらいまでしか入らないそこをそのままに、エルヴィンは胸元に唇を寄せる。

ちゅっ、と吸い付かれるそこはどこも的確に気持ちいい箇所ばかりだ。
胸の先を口に含まれて、熱い口の中で転がされると痛みよりも気になって、でもお腹の奥の熱が膨らんで苦しい。

「は、あ…エル、ヴィ…っひああ!」
「少し強行だったが…大丈夫か?」
「っ…」

ぐっと腰を押し付けられ、恐らく全部収めきったのだろう。
エルヴィンの身体が密着しているのはわかる。

力だけで押し入られたのが思いの外痛くて、不安そうなエルヴィンの声にも首を横に振って答えるしかできない。
というか、やめてくれるんじゃなかったのか。

「力を抜いてくれれば、きっとナマエも少しは楽になれるはず」
「むり、える…いたい…」
「分かってる、すまない」
「えるぅ…っん、やあ…はっ、あ」
「そうだ、その調子で少しずつ力を抜いて…」

繋がったまま痛みを生むそこを指でなぞるエルヴィン。
くすぐるように突起を撫でて、くにくにと押し潰して捏ねられれば、やっぱりまた痛みは和らいだ。

更に胸を手と口でそれぞれ弄られると、もう痛みは忘れるほどだった。
それよりも奥のむずむずした熱を消して欲しい。

「エルヴィン、お腹の奥、熱いの…むずむずする…」
「掴まってて、多分、届く」
「ひあ、あ!ああっ!ん、ふあ、っ」
「ここが奥だと思うが、どうだ?」
「むずむず、止まる…から、もっと、して…」
「可愛いね…堪らないよ、っ」

エルヴィンの大きな手が腰を掴んで揺さぶってくる。
奥にこつんと当てられる度に、むずむずしていたものが止まって、熱も心地いいものに変わる。

エルヴィンはどんな顔をしているのかと見上げると、真っ赤な顔でこちらを見ている。
凛々しい眉は下がり、目も潤んでいる。
前髪は半端に乾いたせいでくしゃくしゃで、額から落ちる汗はきらきらして美しい。

やはり、エルヴィンは美しい。
熱に浮かされたような顔をして、こんなに人間らしい欲に塗れた行為をしていても彼の美しさは消えやしない。

「ナマエ、どうしよう…すごく気持ちいいよ」
「エルヴィ…私も…ねぇ、なにか、くる」
「私も、限界が近そうだ」
「や、あんっ…なんで、大きく…」
「舌を噛むから、喘ぐだけにしておきなさい」

それはそれで難しいと思う。
なんて冷静な対応ができるはずもなく、数回激しく揺られれば、目の前が真っ白になった。
その直前、お腹の中にいたエルヴィンも一際大きくなったのを覚えている。





「ああ、どうしよう…」

酷く深刻そうなエルヴィンの声に起こされる。
ベッドサイドの時計からして、そんなに長い間意識を飛ばしていたわけでもなさそうだ。

「ナマエ!すまない、私は君に…」
「何?どうしたの?」
「こんなに血が…もう止まったようだが、傷付けてしまった。すまない、痛かっただろう」
「初めての時は大抵の人が出血するって言うし、大丈夫よ。泣かないで…っひゃあ!」
「ナマエ!?どうした!?」

オロオロと泣き出すエルヴィンの涙を手で拭うと、自分の爪のあたりに血がこびりついているのが見えた。
嫌な予感にエルヴィンの背中を見やれば、案の定生々しい傷が無数についていた。

「エルヴィンだって背中、痛いでしょ!?ごめんなさい、薬、どこだっけ」
「そんなに酷い傷なのか?大して痛くないから大丈夫だ。軽い傷だけで痛がっていてはこんなところで団長なんて務まらない」
「そうだけど、でも…エルヴィンの綺麗な背中が…」
「私だって綺麗なナマエの純潔を奪ってしまった。が、それに関しては後悔は一切無いけどね。一生かけて責任を取るつもりだ」
「そうじゃないと困るけど」
「で、ナマエ、これは燃えるゴミかな?燃えないゴミかな?」
「燃えたゴミなのは間違いないけど、まさかそのままずっと持ってたの?」

目の前に突き出されたのはたっぷり中身の入ったゴム。
口を縛ってティッシュで包んで捨てるのが一般的だと教えたけれど、本当に妙なところで妙なものを知らない人だ。

腹黒で策士な彼の、とんでもないピュアなところは私だけが知っていればいい。
が、どうせそのうちミケあたりが上手く聞き出してナイルにまで伝わるのだろう。

それまではせめて、この綺麗な男の秘密は私のものにしておきたい。



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