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陰鬱。
2011/11/10 17:45



カッと目を見開いて起き上がる。
脂汗が額から頬を伝ってポタリと落ちる。
早い動悸を落ち着けようと深呼吸して、それからずるずると立てた膝に頭を埋めた。
目の周りが熱くなり、鼻が詰まる。

いつもこうだ。すごく良い夢を見たのに涙が止まらない。

目から止めどなく溢れる涙とは裏腹に、俯きながら僕は笑顔を浮かべていた。




にっこり微笑む、りんごのように赤い頬。
僕と同じ薄いピンクの髪がサラサラと揺れる。
長い睫に縁取られた赤い目は優しく細められている。
ピンクのワンピースを着た小さい頃の妹が、こちらに笑いかけている。


「おにいちゃん」


柔らかい声。


「おにいちゃん、あそぼう」


無垢な笑顔の妹に近寄って抱き上げる。
妹はきゃっきゃっと楽しげに笑い、両手を広げる。


「そうすると天使みたいだ」

「ほんとう?わたし、てんしさま?」


白い腕をぱたぱたと動かす妹を抱きしめて「本当」と言ってやると、頬にキスが降ってきた。


「でもおにいちゃんはひとごろしだよね?」


耳元で囁かれた声の、無邪気さといったら。




妹だったものを抱きしめて、僕は自分の手を眺めた。
さっき抱き上げた時には無かったはずの鈎爪がしっかりはまっている。
鮮血が滴るそれをぼんやりと柔らかい春の日差しに翳しながら、僕は目を閉じる。

そこでいつも、夢が終わる。



やっと落ち着いた涙を服の袖で拭うと、ベッドに寝転がる。
妹の体温も、髪の匂いも、柔らかい唇の感触も全てありありと思い出せる。


「愛してるよ」


妹はもう二度と、僕を責めないし、僕に怯えることもない。
とても素敵だ。


自然と上がる口角がなんだか恥ずかしくて、僕は再び目を閉じた。




end

ブギーマンが妹を殺したのは妹も大人になってから。
母親が死んでから一気におかしくなっていった兄に怯える→兄の殺人に気づく→殺人を糾弾して殺された。
大人しかったブギーマンがあんなチャラチャラしたのも妹を殺してから。
いいお兄ちゃんである必要がなくなってしまったのです。
まぁ陰鬱野郎よりは結果オーライd(^o^)


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