小説もどき
2011/02/03 12:47
ブギーマン、メリーさん、フライデイ
の、イイハナシ…?
↓↓↓
「私メリーさん。今、十字路にいるの」
楽しそうに携帯電話を握るメリーは、クスクス笑いながら通話口にそう囁いた。
《は?メ……》
相手の返事を聞かずに終話ボタンを押し、てくてくと軽やかに歩きだす。
十字路を左に曲がり、横断歩道を渡り、道なりにまっすぐ。
公園まできたところでメリーは再び携帯電話を握った。
「私メリーさん。今、公園に居るの」
《だから!ちょ……》
また相手の返事を聞かずに終話ボタンを押し、歩きだす。
公園を通り抜けて細い路地に入り込む。
腐食したトタンの隙間から落ちる光を踏みながら歩く度、足元に散らばるガラスやぐしゃぐしゃの新聞紙の欠片が音を立てる。
細い道を抜ける直前、メリーの首にかけた携帯が着信を知らせた。
軽快な電子音に目をぱちくりとしばたかせたメリーは、慣れない手つきで通話ボタンを押した。
《ボク、ブギーマン。今お前の目の前にいるんだが殺していいかい?》
メリーが目を上げると、細い道の出口に鋭い爪が覗いていた。
《電話ってのはお互いに話し合うもんなんだよ。いいかい?》
爪だけだったブギーマンが、ひょいと路地の出口に立ちはだかった。
耳に紫の携帯電話を当て、ニヤニヤと笑っている。
メリーはぽかんと目の前の殺人鬼と自分の携帯を見つめ、いきなり破顔した。
「すごいの!繋がってるの!私とブギーマン、繋がってるの!お話できるの!電話、すごいの!」
「うわ、何だいいきなり。繋がるんなら下のおく……」
「KIIIIIIIIIILL!!!!!!」
卑猥に笑ったブギーマンの側頭部を、ブーツの大きな足が捉えた。
「死ねッ!死ねッ!死ねッ!死ねッ!」
「こっちの台詞だフライデイィイイィイ!この童貞不細工筋肉達磨ァァアアッ!」
罵り合いながら殺し合いを始めた二人を嬉しそうに見つめながら、メリーは携帯を宝物のように握り締めた。
*****
メリーにとって電話は今まで一方通行のものでした。
イイハナシナノカナー?
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