「中に出すなよ、うぜえ…」
顔を真っ赤にしながら静雄は臨也を睨みつける。
「ごめんね。掻き出してあげるからさ」
そう言ってアナルに指を入れた。
「…ふ…ぅっ、」
びくっとする静雄の体。
「まだ暖かいね」
くちゅ、と音がして静雄の内腿に白い液体が流れ出た。
「や…」
「また感じたの?シズちゃんって結構やらしいなあ」
「うるせえ…って手前!」
ぬるっと、臨也がまた侵入してきた。
「簡単に入ったなあ」
「抜けよ」
耳まで赤くなりながら、静雄は臨也の肩に手を置く。
「シズちゃんが可愛すぎてまた勃ったんだよ」
言うが否や腰を動かし始める。
「あっ、やっめ…」
「ねえシズちゃん。大嫌いな奴に犯されてどんな気持ちなの」
先程放った精液が潤滑油になり、臨也は静雄の体を犯してゆく。
「…殺したい」
「はは、予想通り」
まだ自身が放った精液で濡れた静雄のそれを、片手で握ってやる。「でもシズちゃんあんまり嫌がってないじゃない。君が本気で抵抗したら俺は吹っ飛ぶよ」
ぐりっと先端を親指で刺激すると、静雄のそれは簡単に勃起した。
「あ、…んんっ」
甘い喘ぎ声を上げて、静雄は首を振る。
「俺を押し退ける気はないみたいだね?」
「…はぁ」
熱に浮された潤んだ目で、静雄は臨也を見上げた。
「…って、」
「何?」
良く聞き取れず、臨也は静雄の口元に耳を寄せる。
「気持ち…いいっか…ら、ん、…っあん」
熱い吐息と共に、臨也の耳にダイレクトに届く。恥ずかしいのか、静雄は両手で顔を隠していた。
「うっわ…エロ…」
不覚にも臨也の顔も赤くなる。下半身に熱が集まったのが自身にも分かった。
「て、手前でっかくすんな!」
「いやあ、今のは君が悪いよね?」
言いながら、臨也は繋がったままの静雄の体を持ち上げた。
思っていたよりも軽い体を向かい合って抱きしめる。
静雄の腕を自身の首に回させてやり、自分は細い腰を掴んで下から突き上げた。
「あぁっ、ん…っ」
喘ぎ声が上がるのが恥ずかしいのだろう、何度も唇を噛み締めるが声が漏れてしまっていた。
「シズちゃん…可愛い…」
「可愛いって言うなって言っただろ…っ、ん、はっ」
「だーい嫌いなシズちゃんがこんな可愛いなんて思わなかったよ」
「手前はよく嫌いな奴を抱けるな…ん、っはぁ」
静雄が感じるところを重点に攻めながら、臨也は口端を吊り上げる。
「俺、シズちゃんのこと実は嫌いじゃないのかも」
「は?」
「愛してるってこと」
そう言って静雄に口づけた。
静雄の目は丸く開かれる。
触れるだけのそれは優しくて、静雄はやがて目を閉じ、強請るように唇を開けた。
直ぐに熱い舌が侵入してきて互いに絡め合う。ぴちゃぴちゃと濡れた音がするのに静雄の羞恥心が煽られる。
臨也はやがて唇を離すと、まだ苦しそうに上下する静雄の首筋に噛み付いた。
「った…、」
「シズちゃんがこんなんで痛いわけないでしょ」
くぐもった笑い声を上げて、臨也は尚も静雄の首筋に噛み付いたり吸い付いたりを繰り返す。
痕を付けられているのだ、と静雄が理解した頃には何箇所も朱い印がついていた。
「手前、何すんだよ…」
「所有印。なーんて」
未だに下半身は繋がったまま、まだ余裕があるらしい臨也は、ふふと笑った。
「死ね」
静雄は殴るふりをするが、激しく動くとぎゅっと繋がった箇所が締め付けられた。
「ふぅ…ん…」
「気持ち良さそ」
汗で額に張り付いた金髪を撫でてやりながら、臨也はまたキスをする。
離れては口づけて、何度もちゅ、ちゅ、と音がする。
額にも鼻先にも頬にも口づけた。涙に濡れた睫毛の先さえ。
その度に静雄は頬を染め、艶っぽくなってゆく。
「臨也…」
静雄は熱い吐息と共に名を呼んで、臨也の首筋に顔を埋める。舌先で汗を舐めて、ちゅくっと吸い付いた。
「シズちゃん…、」
臨也が目を見開く。
「仕返しだ」
にや、と笑って静雄は離れていく。臨也の首筋に残った朱い痕を見て嬉しそうに笑う。
「シズちゃんはほーんと可愛いよね」
臨也は眩しいものでも見るように目を細め、静雄が言い返してくる前に腰の動きを早くした。
「あっ、う…、っ」
「シズちゃんも動いてみて」
「…ふ、ぅ…っん」
結合箇所からぐしゅぐしゅと濡れた音が響く。静雄もぎこちなく腰を振った。
「シズちゃん、気持ちいい?」
「気持ち…い…ぃっ、あ…っん」
「俺とシズちゃんって本気で体の相性良いみたいだ」
臨也の腰の上に座って、中にそれを受け入れてる細く白い体。汗ばんで赤くなった肌は、今まで抱いたどんな女よりも愛しい。
飲んでる時はこんなことになるなんて思わなかったけれど――…後悔は不思議としていなかった。
「シズちゃん、そろそろイくよ」
腰を抱え直して激しく打ち付ける。静雄は一際高い喘ぎ声を上げた。
そのまま果てた後もまた抱いて、何度も何度もイき過ぎて薄くなった精液を静雄の中に注ぎ込んだ。静雄が泣き出すまで。


「この変態…っ」
すっかり腰が抜けてしまった静雄は真っ白なシーツに包まれたままグッタリしていた。
「いやあ、俺も自分がここまで絶倫だとは思わなかったかな」
さすがに少し遣りすぎたか、と珍しく臨也は反省している。肌は汗と精液でべとべと、シーツもぐっちゃぐちゃだ。
すっかり忘れてたけどここ新羅の家なんだった…。なんて言い訳しようか。
静雄の方は枕で顔を隠し、さっきからこちらを一度も見ない。
「シズちゃん」
名前を呼んでもスルー。
寝たのかな?と思ったが寝息はしていない。
臨也は顔を近付けて枕をそっと取る。意外にも抵抗はなく、現れたのは涙目の赤い顔だった。
「シズちゃん」
「なんだよ」
「後悔してる?」
「…今更だろ」
「こっち見てよ」
言われてもぞもぞと体をこちらに向けた。
「責任取るから」
「あ?」
「結婚しよう」
「……」
静雄のこめかみに筋が一本浮かび上がる。今ここに自販機があったら、きっと投げているに違いない。
「怒らないでよ。結構マジだから」
臨也は自分の右手の人差し指から指輪を抜くと、静雄の左手を取って同じ箇所に嵌めてやった。
「うわ、ぴったりだし」
「んだよ、これ…」
「あげるからちゃんとしててよ」
「……」
静雄は耳まで真っ赤だった。殴る時に邪魔だとかぶつぶつ言ってはいたが外す気はないようだ。
「シズちゃん可愛いなぁ」
「…手前今日それ何回言うんだよ」
「だって俺もう、」

君に夢中なんだもの。


あ、もちろん体だけじゃないから。と言ったら殴られた。






新羅が朝起きて見れば、リビングには勝手にシャワーを借りたとか言って二人の男が我が物顔で陣取っていた。
一人は牛乳を勝手に飲んでたし、一人は高いアイスを食べて。
二人共腰にタオルしか巻いておらず、互いの体中には明らかに情事の跡。
それも微妙に纏った空気が変わっていて、甘ったるい香りが彼等からし、よく見ればペアでリングなんてしているし。

「確かに面白がって君らを一つの布団で寝せたよ。ある程度の破壊は仕方がないかなって覚悟もしていたさ。でもこれはかなり予想外で僕としては後悔を感じるどころか天変地異みたいな出来事で正に青天の霹靂。空前絶後。開いた口が塞がらない。阿鼻叫喚だよ。一体なんでこんなことになったか知りたいけれどさすがに状況を細かく説明されると気持ち悪いって言うか鳥肌が立つから聞かないけど、取り敢えずさ、」

シーツ弁償してよね。




(2010/07/24)
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