ああ、好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ。
胸が苦しくなるくらい好きで好きで好きで。
気付かないふりをしても無理だった。
溢れ出した感情はもう堰き止めることができずに流れ出て行く。
そして相手に流れ着くまで漂流しているのかも知れない。
だから言うしかないのだ。
いつかこの思いで自分が壊れてしまう前に。


「好きだ」

言葉にするのは簡単なのに。




静雄はぼんやりと煙草を燻らせていた。
青いサングラスが光りを反射して、中の綺麗な瞳は見えない。
臨也は地面に無造作に落ちたひしゃげた道路標識に足をかけて立っていた。
赤い双眸は空に浮かぶ満月を見ている。


「くだらねえジョークだ」
「ジョークだと思ってるわけ?」
「本気なら笑えねえ」


白い煙草の煙りが空に消えてゆく。
もう先の短くなったそれを静雄は地面に落とし、踵で踏み消す。
「で、どうしたいんだよ。手前は」
静雄は臨也に視線を向けた。
臨也は静雄からは逆光になっており、表情は見えない。
「付き合って」
「キスしたい」
「セックスも」


「最後のきめえ。いや、全部」
「そのうちシズちゃんを犯しちゃいそう。監禁とかしたい」
臨也の言葉に静雄は固まった。頭の中で理解するのに数秒間。
「いやいやいや。無理無理無理」
「本当にそう思う?結構高確率で成功すると思うんだけどなぁ」
「…帰る」
静雄はスルーすることに決めた。
臨也の隣を抜けて、歓楽街へと歩き出す。
「シズちゃん返事は?」
「返事?」
「告ったんだから返事ちょうだいよ」
静雄が振り返ると赤い瞳と目があった。
臨也の顔は今まで見たことがないくらい真剣で、静雄は少したじろぐ。
「シズちゃんが嫌ならもう会わないようにするよ」
できるといいけど、と小声で。
っていうか振られても監禁とか実行しちゃいそうだ。
「…声に出てんぞ」
「あら」
「んー…」
静雄は頭を掻きむしりながら、暫し黙り込んだ。
「いいぜ」
「え」
「付き合っても」
「……」
今度は臨也が固まった。
「なんだよ」
「いやいやいや。なんで?」
「自分から告ってなんだそりゃ。」
「だってさぁ!」
静雄は面倒臭そうな顔で舌打ちをする。
「――…そりゃあ、」



お前が好きだからだろ。

×