1月9日(水)責任B(終)

 強い力で腕を掴まれて、静雄はギョッとした。振り向けば、天敵がいつになく不機嫌な顔でこちらを睨みつけてくる。
「なに、」
「逃げられないよ。」
「は?」
 拘束する手の力は強すぎて、骨が僅かに軋む。臨也の細い指が、静雄の腕に食い込んでいる。
「逃げられないよ、君は。逃がすつもりもない。」
「何、言って…、」
 戸惑い、困惑し、そして静雄は狼狽した。臨也の赤い目は、射抜くように静雄を見ている。

 ──臨也はとっくに知っている。

 ぞくりと肌が粟立ち、静雄は指先を震わせた。所詮この男が相手では、隠し切れやしなかったのだ。
「臨也──、」
 けれど臨也の反応は、静雄が思い描いていたどれとも違う。
 罵倒、嘲笑、驚愕──どこにもそんな感情は見当たらない。寧ろ憤っているように見える。何故?どうして?静雄の恋情を不快に思っているのか?それにしては嫌悪の色がない。
「逃がすわけないよ。」
 不機嫌そうだった臨也の顔に、いつものような笑みが浮かぶ。口許を歪め、目を細め、挑発するかのように静雄を見る。
「シズちゃんには、責任をとってもらわなきゃ。」
「責任?」
 なんの──?
 戸惑う静雄に対し、臨也は薄く笑った。

「俺の心を奪った責任。」


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