1月8日(火)責任A

「どうしたの?」

 突然声を掛けられて、静雄は顔を上げた。目を見開けば、目の前に天敵の顔がある。
「目を閉じて考え事?まさか居眠りじゃないよね。」
 揶揄するような声と、皮肉めいた言葉。いつも通りの臨也の顔に、静雄は酷く安心する。
「別に。お前をどうやって殺してやろうか考えてただけだ。」
「それは愉快な考え事だね。」
 静雄の答えに臨也の片眉がつり上がる。その表情は愉しげで、静雄の想いなど少しも気付いてはいないようだ。
 ──当たり前だ。大嫌いな同性の男が自分に恋情を抱いているなど、誰が想像しようものか。
「…でも今日はだりいから、帰る。」
 アスファルトに転がった標識を踏み潰して、静雄は臨也に背を向けた。ほんの僅かだが指先が震えている。これ以上臨也といたら、本当に何もかも吐露してしまいそうだ。
「逃げるの?」
「なんとでも言え。」
 実際逃げるのだから。




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