1月8日(火)責任A
「どうしたの?」
突然声を掛けられて、静雄は顔を上げた。目を見開けば、目の前に天敵の顔がある。
「目を閉じて考え事?まさか居眠りじゃないよね。」
揶揄するような声と、皮肉めいた言葉。いつも通りの臨也の顔に、静雄は酷く安心する。
「別に。お前をどうやって殺してやろうか考えてただけだ。」
「それは愉快な考え事だね。」
静雄の答えに臨也の片眉がつり上がる。その表情は愉しげで、静雄の想いなど少しも気付いてはいないようだ。
──当たり前だ。大嫌いな同性の男が自分に恋情を抱いているなど、誰が想像しようものか。
「…でも今日はだりいから、帰る。」
アスファルトに転がった標識を踏み潰して、静雄は臨也に背を向けた。ほんの僅かだが指先が震えている。これ以上臨也といたら、本当に何もかも吐露してしまいそうだ。
「逃げるの?」
「なんとでも言え。」
実際逃げるのだから。
[ 4/34 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]