1月6日(日)夕陽2
どこか遠くで笑い声がする。誰かが廊下を駆けている足音と、部活動に励む生徒たちの歓声。
静雄はそれをどこか遠い世界の出来事のように聞いていた。まだ寝起きのぼんやりとした頭のまま、ビルの谷間に見える赤い夕陽を見やる。
「…人を殺す夢を見た。」
やがてポツリと低い声で零す静雄に、臨也はゆっくりと顔を上げた。
「夢の中で喧嘩をして……加減が出来なかった。」
そう話す静雄の横顔は夕陽で赤く照らされている。まだ完璧に覚醒してないのか、表情は少し虚ろに見えた。
「…まあ、…シズちゃんの力で本気でやられたら、死んじゃうだろうね。」
例えば自動販売機なんて重い物が頭に当たったなら、命を落とす者は多いだろう。臨也はその素早さから避けることが出来ているが、普通の人間が誰しも避け切れるとは思えない。
「殺人者になりたくないなら、もう暴力をふるわないことだね。」
「お前が言うなよ、それを。」
わざと茶化すように言った臨也に、静雄は僅かに苦笑を浮かべた。
確かに静雄に喧嘩を売る相手の殆どは臨也の画策によるものだ。だが臨也だとて、別に静雄を殺人者にしたいわけではない。数ヶ月くらいは少年院に入ってくれないかな、とは正直思うことはあるけれど。
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