20170810

私はガサツだとよく言われてきた。
女の子なのにガサツ。それはまだマシな方で、乱暴だの粗暴だの、嫌なことばかり言われた。
短気なのは認める。おかげで友達は少ないし、彼氏もこの歳までできたことがない。
所謂『不良』と呼ばれる存在になってしまったのも、この性格のせいだった。
髪の毛は金髪。そして未成年なのに煙草を吸う。
今思えばどちらも好きではなかったが、この年頃の時は取り敢えず舐められたくない、という子供の矜持があった。

よく行くコンビニで、いつも会う男がいた。
夏でも学ランに中は赤いTシャツ。どこの高校だろう?と不思議に思っていた。この近くの高校はどこもブレザーばかりで、学ランの高校生は殆ど見ないからだ。
男は私が今まで生きてきた中で一番美しい顔をしていた。
切れ長の目と、薄い唇。肌は白く髪は漆黒。表情は無かったが、その印象は何故か酷薄。
一度見たら忘れられない存在だった。
男の目が私を射抜く。それは初めてでは無かった。
今まで対峙したのは両手の数では足りないが、男はいつも私を見ると目を眇めた。まるで、私の中を暴くように。

「俺と付き合おう。」

そう告白された時、酷く驚いた。
私は男と話したことはなかったし、名前も年も何一つ知らない相手だったからだ。
でも男は私の名前を知っていた。私が直ぐに暴力に訴えるような短気な性格なことも。

私と男は付き合うようになったが、手を繋ぐことも、勿論キスをするようなことも無かった。
ただ公園や、シンプルなカフェで話をしていただけだ。日常のことや、私が普段、怒っていること。
男はたまに皮肉めいた言葉を吐くことがあったが、概ね私の話を肯定してくれたように思う。

そのうち、男とは会わなくなった。
連絡先は知っていたが、いつの間にか繋がらなくなった。電話もSNSも。
私とて、誰か気に入らない人間をこのように断絶したことはある。
しかし理由も知らされないまま、こんな風に一方的に縁を切られるのは堪えた。
そして私は気づく。私はいつの間にか、男に恋をしていたらしい。

その後、私は一度だけ池袋で男を見掛けた。
男は金髪で背の高い男と──…恐らく追いかけっこをしていた。
空を舞う自動販売機、弾け飛ぶコンビニのゴミ箱。二つに折られた標識。
我が目を疑う光景だったが、それよりも驚いたのは男の表情だった。
凶暴な金髪の男に追い掛けられ、死にそうな目に遭いながら、男は笑っていた。それは楽しそうに。

──…なるほど、と私は納得した。
金髪の男は少し私に似ていた。本当に、少しだけ。

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