20170809

短編


「いつも空を見てるねえ。」

不意に掛けられたその声に、静雄は振り向かなかった。
相手は足音と気配を隠そうともせず、ゆっくりとした足取りで静雄の背後に立つ。
もう直ぐ夏だというのに肌寒い風が吹いてこの男のコロンの匂いを静雄の鼻先に運んで来る。

「そんなに空を見つめても、そこには天使も神もいないよ。」

明らかに嘲るような笑い声で、悪魔のような男は笑った。

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