2月4日(月)雪のはなしC

 テレビもラジカセもない静雄の部屋は、二人が黙り込むと静かだ。熱いお茶を啜る音や、エアコンの稼動音、床に投げ出された時計の音しかしない。
 外の物音さえもしないのは、外出している者が少ないか、積もった雪が雑音を吸収しているせいかも知れない。
「この雪、明日まで降るらしいよ。」
「…へえ。」
 湯呑みを両手で包み込み、静雄は中に入った番茶をぼんやりと眺める。茶色の香ばしい液体には、ムスッとした顔の自分が映っていた。
「明日も電車、混乱してるかもねえ。雪が降った翌日の方が事故も多いし…。」
 窓の外を眺めながら、臨也は独り言のように呟く。その表情は言葉とは裏腹に楽しげで、案外雪が嫌なわけではないのだろう。寧ろほんの少しだけ嬉しそうにも見える。
 あの折原臨也でも、雪となればワクワクするのかと思えば、静雄も思わず笑ってしまった。
 ぷっ、と小さく吹き出す静雄に、臨也が胡乱げな視線を向ける。静雄はそれを誤魔化すように、わざと音を立ててお茶を啜った。今はさすがに喧嘩をしようとは思わない。

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