1月31日(木)雪のはなしB

「シズちゃん、上着。」
 自分のコートを丁寧にハンガーに掛け、臨也は次に静雄へと手を伸ばした。その手を振り払いたい衝動に駆られたものの、静雄は結局濡れた上着を脱いで渡す。
「コーヒーとかある?」
「てめえに淹れてやるのはねえよ。」
「あ、番茶だ。渋いねえ。」
 人の話を全く聞かず、臨也はキッチンの棚からお茶の缶を取り出した。ケトルに水を入れ、コンロを弄ってお湯を沸かし始める。
「お前、勝手に…、」
「あったかい飲み物でも飲んで、早くあったまった方がいいよ。」
 確かに臨也の言うことは尤もで、外から帰宅したばかりの静雄は体が芯まで冷えていた。
 静雄の部屋はボロアパートで、隙間風もかなり入り込んで来る。今日は風が強いわけではないが、雪のせいでいつもより寒く感じた。
 静雄が着替えている間にお湯が沸き、臨也が急須でお茶を淹れてくれる。湯呑みなんて一つしかないので、臨也は自分の分をマグカップに注ぐ。
「いい匂い。」
「お前、お茶なんて飲むのか?」
「家では紅茶やコーヒーのが多いけど、嫌いじゃないよ。」

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