1月21日(月)雪のはなし

 今季初めての雪が東京に降った。
 朝には小雨だったのが、昼前には霙になり、午後には本格的な雪になって、街を覆い尽くしてゆく。
 残念なのは、雪国のようなサラサラな雪では無く、水分を多く含んだ重い雪だったことだろうか。お陰で雪が降り積もった傘が重い。
 履いていた靴は既にぐしょぐしょに濡れて不快だった。スラックスの裾も、雪の水分を含んで冷たい。
 寒いせいで鼻先は冷たいし、頬も耳も指先も、悴んでじんわりと痛みを訴えている。早く家に帰って暖まらなければ、風邪を引きそうだと思った。
 雪が降り積もる道をやっとの思いで進み、自分が住むおんぼろアパートが見えると、静雄はホッと息を吐く。軒下で雪を払い落とし、傘を折り畳むと、ギシギシと揺れる階段を上った。
 ポケットから鍵を取り出そうとして、悴んだ指に舌を打つ。冷たい鍵を手にし、自分の部屋の前まで来て──静雄はぎょっと目を瞠った。

「な、」
「遅いよ。」

 部屋の前には全身黒ずくめの男が立っていた。

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