1月19日(土)別れ話A
「臨也と静雄、別れたんだ?」
共通の友人である闇医者は、少しだけ驚いた顔をし、それから直ぐ面白そうに笑みを浮かべた。
元々傍観者的な立場にいる彼は、自分たちが仲が悪かろうが良かろうがその関係に口を出すことはしない。
臨也と静雄が別れても二人にとって新羅は友人であり、困ったときの『主治医』でもある。治療や仕事で新羅のマンションでばったり二人が出会う──なんてことも多々あるのだ。
二人の破局に関係のない新羅は、臨也とも普通に話すし、静雄とも笑い合う。それは至極当たり前のことだ。なのに臨也はそれに苛立つ自分を感じている。
静雄は新羅には屈託なく笑う。臨也にはもう笑い顔は見せなくなったのに、他の人間には笑うのだ。そんな事実に臨也は酷く苛立っている。
まるで何もなかったかのように、静雄はいつも通りだった。親友である首無しと会い、新羅とお茶を飲みながら話し、上司や後輩と真面目に仕事をし、たまにチンピラと喧嘩をしては、怒って自販機を投げる。街で会う同級生とは何気ない挨拶を交わし、ロシア人の経営する寿司屋では少量の酒を飲み、芸能人の弟のことは相変わらず大事にしている。
──そう、何も変わらない。まるで臨也との別れなんか無かったかのように、何一つ日常が変わっていないようだった。
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