1月16日(水)料理の話

「最近太ったんじゃない?」

 元中学の同級生。今では闇医者というすっかりアンダーグラウンドな職業に就いてしまった男は、コーヒーを啜る臨也を見てそう言った。これが妙齢の女性──例えば新羅が御執心の首無しライダーであったなら、彼は半殺しの目に遭うであろう。幸いなことに臨也は元々痩身であったので、その台詞に特に怒りを覚えることはなかった。
「そうかな? 波江さんの料理のお陰かもね。」
 彼女、料理上手いんだよねえ──。臨也は自身の腹をさすりながら笑ってそう答えた。毎日食べているわけではないが、あのブラコンの秘書が作る料理は美味しいのだ。
「付き合ってるわけじゃないよね?」
 恐る恐ると言った風に訊いてくる新羅に、臨也はその端正な顔を思い切り顰めた。
「それは笑えない冗談だね…。彼女の頭の中は九割が弟のことだって言うのに。」
 あとの一割は日常生活と仕事のことだろう。何にせよ、臨也のことは殆ど頭にないに違いない。
「僕は十割がセルティのことだよ!」
「張り合わなくていいから。」
 喜々と叫び出す新羅に素っ気なく返し、臨也は会話をさっさと切り上げることにした。新羅が惚気話を始めると長いので、正直うんざりとしている。
 言葉を遮られたことで新羅は眉尻を下げるが、直ぐに思い直したように話題を変えた。
「臨也って手料理とか好きなの?」
「嫌いな人なんているの?」
 質問に質問で返したのは、半ば質問に呆れたからだ。レストランだってシェフの手料理と言えるだろうし、レトルトやインスタントよりは人が作った料理の方がいい。
「じゃあさ、静雄の手料理食べたことある?」
「は?」

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