1月14日(月)ちょっとエロ

 手が、指が、爪先が。肌の上をゆっくりと這ってゆく。
 自分の体はもうとっくに動けなくなって、殴るどころか相手の体を押し退けることも出来ない。
「…ふ、っ、…あ…、」
 温かく肉厚な舌が耳朶を食めば、甘ったるい声が唇から洩れる。こんな声、自分の物だと思いたくはなかった。
「…シズちゃん。」
 嫌な愛称で名を呼ばれる。何度言ってもやめることのないその呼び方に、最近ではすっかり耳に慣れてしまった。
「ねえ…気持ちいい?」
 少し高めのテノールが、熱い吐息と共に耳を掠めてゆく。その声を聴くだけで、静雄の身体には甘い痺れが走る。
「…っ、や…あ、」
「腰、揺れてるね。」
 いやらしい──。そんなことを平気で宣う臨也を、静雄は蹴り飛ばしてやりたかった。
 気持ちがいいだなんて、絶対に言えるわけがない。喘ぎ声だって少しも洩らしたくはないのだ。今だって臨也の身体に縋り付きたいのを、必死で我慢している。
「…ほんと、君は強情だね。」
「…っ、」
 穿った腰を揺らされれば、静雄はヒュッと息を飲んだ。信じられないほどの快感が身体を蝕み、静雄の理性を奪ってゆく。
「あっ、…っ、」
「…ほら、シズちゃん。」
 濡れた臨也の舌先が、柔らかく首筋へと下りて来る。チクッと痛みを感じるのは、きっと所有印を付けられたからだ。
「いい加減、認めてしまいなよ。」

 もう君は、とっくに俺のものなんだからさ──。

 黒い悪魔は、そう言って嗤った。


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