1月12日(土)calendarA(終)

「シズちゃんは愉しくないのにここに居るの?」
 ここ、とは勿論、新宿の臨也のマンションのことで──静雄は現在、このマンションに臨也と同居していた。同居じゃなくて同棲でしょ?とは幼なじみである闇医者の言葉だが、静雄は勿論それを否定している。
「…愉しいことばかりでもねえだろ。」
 どちらかと言えばスリリング。今までして来た喧嘩の数だって尋常じゃない。このマンションの壁に穴が開いた回数も、両手で数えても足りない程だ。
「え?、じゃあシズちゃんは嫌なのにここに居るんだ。」
「別にそういうわけじゃねえよ。嫌だったらとっくに出て行ってる。」
 笑い混じりの臨也の言葉に、静雄は不機嫌を露わにした。本気でそう思ってなどいない癖に、この男はわざとこんなことを訊いてくるのだ。臨也のこんなところが静雄は嫌いだった。
「じゃあシズちゃんは今幸せ?」
 紅茶をティースプーンでかき混ぜながら、臨也は赤い双眸を僅かに眇める。口調は相変わらず軽い癖に、その眼差しは探るようにこちらを見ていた。
「…悩みは一つ、あるけどな。」
「へえ?、どんな?」
 そんな臨也の眼差しを受け止め、静雄は唇で弧を描く。
「このまま行くと、俺は直ぐ爺さんになっちまうってことだ。」

 ──お前と一緒に居ると、時が経つのが早すぎて。

 珍しい静雄のジョークに、臨也は声を上げて笑ってしまったのだった。

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