1月11日(金)calendar

 カレンダーを捲って、次の月が現れれば、月日が経つのは早いなァ、なんて思う。
 ついこないだ高校生だった気がするのに、いつの間にか成人して、更に結婚適齢期を過ぎ、もう直ぐ静雄は三十路になる。働き盛りという、一番脂の乗った年齢だ。
「それって『俺と居るのが愉しくてあっという間に時が過ぎた』ってことなのかな。」
 そう言ってソファーにふんぞり返っている男は、口端を吊り上げて笑った。黒い革張りのソファーで長い足を組む姿は、嫌になるほど様になっている。
 静雄はわざと大袈裟に溜め息を吐くと、仏頂面で向かいのソファーに腰を下ろす。
「そんなこと一言も言ってねえよ。手前はなんでそんなに傲慢なんだ?」
「ポジティブって言って欲しいなあ。」
 秘書の女が淹れた紅茶を飲みながら、臨也はチラリと壁に掛けられたカレンダーを見やる。先程まで飾られていた『先月』の紙は捨てられ、新しい主役の数字がそこで主張していた。
「愉しく時が過ぎるのはいいことじゃない。」
「そりゃあ愉しかったらな。」
 暗に自分は愉しくないことを仄めかすが、臨也はそれを綺麗に無視する。本当にムカつく男である。


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