冬が近づいてくる、近頃。日がくれれば風が吹き抜け、身に凍みる。
そんな夜には綺麗な月が出ていて、窓を開けて、酔いたい気分になるものだ。
アルコールが入り、少しだけ熱くなった頬を夜風が撫でていく。


「やっぱり月見酒はいいね」


今晩、桃太郎君は地獄へ出かけている。一人で晩酌を楽しんでいるとコンコンと戸を叩く音が聞こえた。


「はぁーい」

こんな時間に誰だろう?もう店を閉めてから随分経つというのに。
戸を開けるとそこには、鬼灯の妹、そして僕の想い人でもある鬼灯の妹が立っていた。
目元が少し赤くなり、瞳に涙を溜めている。


「はくたくさま…」


まさに今まで泣いていたのだろう、掠れた声で僕の名前を呼ぶ。


「どうしたの?鬼灯の妹ちゃん!」
「兄上様と喧嘩をしました…」


いつもの事、といえばいつもの事なのだが、鬼灯は妹には甘く、泣くほどの喧嘩をしているのは見たことがなかった。


「とりあえず、中に入りなよ」


そっと、鬼灯の妹ちゃんの肩を掴むと冷たい感触が伝わる。喧嘩をしてそのまま飛び出してきたのだろう、外へ出るにしては薄着だった。微かに震えているのも分かる。


「温かい飲み物を作るから待ってて」


鬼灯の妹を座らせ、その場を離れる。
さて、どうしたものか。と思案しながら手際よく飲み物を準備し、鬼灯の妹ちゃんの待つ部屋へ戻る。


「おまー…」


部屋に戻ると、鬼灯の妹ちゃんは窓の外を見ていた。月の光が、薄暗い室内を照らし、鬼灯の妹ちゃんの髪の毛に反射してキラキラと光っている。鬼灯の妹ちゃんの手には先ほど僕が晩酌をしていた、酒の瓶が握られていた。


「鬼灯の妹ちゃん?!飲んだの?」


僕は慌てて鬼灯の妹ちゃんに近づく。すると鬼灯の妹ちゃんは振り向いて、へにゃりと笑うと腰の辺りに抱きついてきた。


「はぁくたくさまぁ」


先程と違いがい、甘く、とろんとした声で甘えてくる。どれぐらい酒を飲んだのかは解らないが、完全に酔っている。
ぎゅうっと掴まれた腰、押し付けられた顔、位置的に…位置的に……!


「鬼灯の妹ちゃん?いったん離してくれないかなっ」
「はひ」


鬼灯の妹ちゃんは素直に手を離すと、すとんとその場に座った。
その隣に僕も腰を下ろし、手の中のカップを渡す。


「とりあえず飲もうね?」


鬼灯の妹ちゃんへカップを渡し、落ち着くために自分の分に口をつける。
鬼灯の妹ちゃんもそれに習い、カップへ口をつけた。




ラッキーデイ?

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