鬼灯が育てる金魚草が風に揺れる。ぴちぴちと尾ひれを動かして、今日も元気に育っている。
「鬼灯の妹?」
その金魚草畑の前の通路で鬼灯の妹はぼーと金魚草を眺めていた。そこへ鬼灯が通りかかり声をかける。
「あ、兄上様」
「顔が赤いですね?どうかしましたか?」
鬼灯は鬼灯の妹の額に手を当てて、熱がないかの確認をする。ひんやりとした鬼灯の手が額に触れ、鬼灯の妹は少し目を細めた。
「熱は無いようですが…」
はて?と鬼灯は首を傾げる。鬼灯の妹はやはりぼーっと心此処に在らず。
「何かありましたか?」
何か、と言う言葉に鬼灯の妹は反応して更に顔を赤めた。
「な、何も!何もありませんよ、兄上様」
へにゃりと鬼灯の妹は笑い、鬼灯に嘘を吐く。脳裏には白澤と先刻、キスをしたことを思い出しながら。
「そうですか?疲れているなら休まないといけませんよ」
鬼灯はポンポンと鬼灯の妹の頭を軽く叩き、撫でた。
「はい!兄上様も!」
「そうですね」
鬼灯はそう言うと、仕事に戻っていった。鬼灯の妹は一人でまた金魚草を眺めたが、ふと思い立ち、その場を離れた。
君想ふ
兄上様はやっぱり優しい
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