麗らかな午後の昼下がり、白澤は珍しく閻魔殿へと出向いていた。
普段なら一切近づきはしないのだが、閻魔大王から直接お呼びがかかったのだ。


「相変わらず広いね…」


道に迷いそうな程、閻魔殿は広く、慣れていないと簡単には閻魔大王の元へは着かない。


「あ、白澤さまー!」


広い廊下に幼さを残した高い声が響く。同時にタタタと床を蹴る音。
白澤は声の方向へと視線を持っていくと、一人の少女が白澤に向かって走ってくる。
そして、約3メートル手前で跳躍。白澤の頭目掛けて跳び蹴りを入れる。

白澤はその足を左手で流し、勢いで飛び込んできた少女を抱き止める。


「やぁ、鬼灯の妹ちゃん」
「離せ、偶蹄類」
「酷い言い方だね」


鬼灯の妹、鬼灯の妹である彼女は鬼灯の教育のお陰か、白澤への態度が酷い。
抱き締められている白澤の胸をぐいぐいと押し、離れろと主張する。


「兄上様に殴られにきたの?」
「閻魔大王様に呼ばれたんだよ。あと鬼灯の妹ちゃんに会いに」
「本当に良く喋る口だね、縫ってあげようか?」


白澤の力には勝てないと思ったのか、鬼灯の妹は白澤を押すのをやめ、腕の中に大人しく収まった。

「鬼灯の妹ちゃんからキスのお誘いなんて嬉しいなぁ」
「そんな訳な…んっ…んー!」


勝手に何を言っているのか、と抗議の声を上げたが白澤の唇で塞がれてしまう。
鬼灯の妹は激しく抵抗し、白澤の胸を思いっきり叩いた。鬼灯の妹はぐっと唇を固く閉じ、白澤を拒むが、白澤に唇を舐め上げられうっすらと唇を開いてしまった。
そのタイミングを見逃さず、白澤は更に口内へ侵入してくる。


「…ふぁ…ん…」


白澤が舌を絡めとっては、鬼灯の妹が逃げる、を繰り返し、深い深いキスになっていく。
鬼灯の妹の目には苦しさからか、涙が滲んできた。


「ごちそうさま」
「…っ…はぁ…」
「顔真っ赤だよ」


白澤は余裕の笑みで腕の中の鬼灯の妹を見る。鬼灯の妹は涙目になりながら、息を整え、白澤を睨んだ。


「ふ、ふざけるなよ…!」
「ふざけてなんかいないよ?鬼灯の妹ちゃんが好きだからキスしただけじゃない」


鬼灯の妹は肩を振るわせ、そのまま白澤の顎に頭突きをした。白澤は正面からそれを受けてしまい、痛さの余り、鬼灯の妹を離し、顎を抑えうずくまった。


「…いったぁ!」
「白澤さまなんか…兄上様に殴られて脳ミソぶちまければいいんだ!」


鬼灯の妹は捨て台詞を吐いて走り去ってしまった。





ツンデレですか?

鬼灯の妹ちゃん、何しに来たのかなぁ…
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