今思えば、一目惚れだったのかもしれない。
兄上様の元へ訪ねてくる鬼神の鬼灯様。兄上様に似てるけど、でも違う方。

兄上様と仲が良くて、羨ましくて、私も仲良くなりたいと思った。


でも、私は感情表現ができないから、きっとつまらない子だと思われてしまう。


だから、だから、見てるだけ。





暖かな日差しが窓から差し込み、白澤の妹の机の上を包み込んでいた。机の上には確認すべき書類と、整理すべき書類がごちゃごちゃになって散乱している。


(寝てしまった…)


未だに覚めぬ頭でも、居眠りをしてしまった事は理解ができた。


(何時だろう、鬼灯様に怒られてしまう)


部屋の時計を確認しようと、部屋を見渡すと、隅にある本棚の前で鬼灯が本を読み更けているのが目に入った。


「鬼灯様!?すみません今すぐ…」
「あぁ、いいですよ白澤の妹さん」


白澤の妹の意識は覚醒し、鬼灯への謝罪と、机の上の書類に意識が向く。
それを制するように穏やかな声で鬼灯は白澤の妹の名前を呼ぶ。


「疲れているんでしょう?休んでいて大丈夫ですよ。今日の仕事はもう終わりです」

「え?」

「私も疲れたのでサボりです」


手に持った本を軽く上げ、仕事以外の本だということを表現する。


「寝顔が可愛らしかったので、起こさないでおきました」
「……!」


白澤の妹は鬼灯の言葉に目を見開くと、恥ずかしくなり顔に熱が集中する。


「そんな顔もするのですね」


鬼灯はいつもより柔らかい顔で笑っているようだった。

「…鬼灯様も」

「?」

「そんな顔するんですね」


白澤の妹は恥ずかしさのあまり、鬼灯にそのまま言葉を返す。表情の少ない白澤の妹もそうだが、鬼灯が笑うのもかなり珍しい。


「白澤の妹さんの前だからですよ」


特別です。
と、鬼灯ははっきりとにこり笑った。
その笑顔に白澤の妹の心臓が煩く動く。


(あぁ、やっぱり―――)






貴方の特別に

これは夢の続きですか?
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