鬼灯の妹ちゃんは、僕の渡したカップに口をつけ、ぐいっと飲んだ。熱くなかっただろうか。


「あまくなぁーい…」
「蜂蜜入ってるよ?」


べーっと舌を出して嫌がる鬼灯の妹ちゃん。そんな姿も可愛いななんて考えていたら、鬼灯の妹ちゃんはすっと僕へ寄って来た。座っていた太ももに手を置き、首筋の辺りに顔を寄せ、肩のところに頭を乗せる。


「はくたくさまは、いいにおい」
「しぇ、謝謝」


いつもは恥ずかしがって(と鬼灯がいて)寄ってこないだけに、鬼灯の妹ちゃんの行動にドキりと心臓が跳ねた。酔っているからだ、と分かっていても誘われているようで、反応してしまう。


「どーん!」
「うわぁっ」

静かに寄り添っていたと思うと、いきなり肩を押された。その反動で僕は背中を軽く床に打つ形で倒れた。押し倒された体勢に近い。


「はくたくさまつかまえた」


にんまりと笑って鬼灯の妹ちゃんは俺の上に乗っかった。本当に無意識って怖いな、何て思いながら、チャンスじゃないか!と少し嬉しい自分に涙が出そうになる。酔っている相手にヘタなことは出来ない。
鬼灯の妹ちゃんはそのまま僕に覆いかぶさる形で、僕の胸へ顔をつける。


「鬼灯の妹ちゃ、ん?」


そして、そのまま眠りについた。
泣いて、お酒を飲んで…疲れて寝てしまったのであろう。僕は仕方なく鬼灯の妹ちゃんの体を横にずらし、体勢を逆転させる。
僕が鬼灯の妹ちゃんを押し倒している体勢になり、無防備な鬼灯の妹ちゃんの顔が目の前に映し出される。今すぐにでも襲ってしまいたいぐらいだ。


「鬼灯の妹は来ていませんか!!」


何というタイミングなのか。
鬼灯の妹ちゃんの無防備な顔に見とれていたらガンッと凄い音を立てて戸が開く。
そこには鬼灯が息を切らしながら立っていた。


「鬼灯…晩上好(こんばんは)…」

「何、してるんですか?」


鬼灯の眉間にシワがより、額には青筋さえ見えそうだ。正に鬼の形相。
正反対に僕の額には嫌な汗が流れた。


「誤解だよ!何もしてないし、この体勢には深い理由が」
「言い訳は聞きませんよ」


鬼灯は金棒を振り上げ、僕の顔面目掛けてフルスイング。
間一髪でかわして、鬼灯の妹ちゃんから離れる。鬼灯は鬼灯の妹ちゃんを軽々と抱き上げ、俺を睨み付けた。


「今日は鬼灯の妹がいるので失礼しますが、次は覚悟して下さい」


そういって去っていった。
鬼灯が去った戸からびゅうと風が吹き込んできた。


「はぁ…」


僕は深い深いため息をついた。結局の所、兄妹喧嘩に巻き込まれ、損をしただけの様な気がする。
酔いもすっかり覚め、どっと疲れた僕は寝ることにした。




秋の夜長に…

お酒には注意!




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最後がさっぱりしすぎかも。もう少し白澤様にあたふたして欲しかった!リベンジする!リベンジ!
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