「もーほぉずきはぁ〜」
「はい」


なまえは鬼灯の隣に座り、鬼灯にちょっかいを出し始めた。
鬼灯が少し目を離した隙になまえは泥酔していた。新卒達が酌に来るのを相手にしている間に何があったのか。鬼灯は少し首を傾げた。
先ほどなまえ座っていた席の隣には、かなり酔っている閻魔大王の姿も見える。大方、なまえにここまで酒を飲ませたのは閻魔大王だろう。なまえが上司から勧められた酒を断るはずはない。


「なまえさん、まだ飲むのですか?」
「のみますよぉ〜ほぉずきをつぶすのです〜」


鬼灯の手元にも日本酒の入った升がある。それに酒を注ぎながら、ケラケラとなまえは面白そうに笑う。


「それは無理だと思いますが」


鬼灯は、そうそう酔うことはない。鬼灯を潰す前に間違いなくなまえが潰れる。そして、二日酔いで明日の仕事に支障が出るのは間違いない。
鬼灯の言葉になまえはむっとした表情になる。鬼灯はその顔を見て、良い事を思いついたとばかりに手を打った。


「あぁ、なまえさん、酔いが早く回る方法がありますよ」
「なんれす?」
「口移ししてください」
「はっ?!」


なまえはろれつの回らない程酔っているのに、鬼灯の言葉は理解できた様だった。酔いとは違う熱でなまえは頬を染める。
幸いにも周りの者達は潰れて寝ているか、仲間内で盛り上がっており、鬼灯たちの行動を気にかける者はいなかった。


「ほぉずき…」


なまえが抗議の声を上げる前に、鬼灯は口に日本酒を含み、なまえの唇を塞いだ。なまえの唇を舌でなぞり、鬼灯は舌を口内に割入れた。


「んん…!」


舌と舌を絡ませれば、アルコールの香りが鼻を刺激しむせ返る。その香りにくらくらと目眩がする。
なまえが日本酒を飲み下したところで、鬼灯は唇を離した。


「……けほっ…」
「ちょっと暑くなってきますね」


なまえは少し咳き込み俯く。くらくらとしているのか、頭が揺れている。鬼灯は少しだけ赤くなった自分の顔を冷ますように、手で顔を扇いだ。


「なまえさん…?」


なまえが俯いたまま顔を上げないので、鬼灯はなまえの顔を覗きこんだ。


「ーーー〜っっ」


なまえはガバっと顔を上げると、瞳に涙を溜めて何か言おうとしたのだが、そのまま仰向けに倒れた。


「なまえさん!」


鬼灯はなまえが床に付く前に手を差しだし、なまえを受け止める。なまえは意識を失っている様だ。


「すみません。なまえさんを部屋まで運んできます」


鬼灯の声で周りの獄卒達もなまえの異変に気づいた様で周りに集まってきた。
鬼灯はなまえを抱き上げると、宴会の場を後にした。







ぐるぐるまわる視界

まったく世話が焼けます






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -