待ちに待った休みの日。
偉くなればなるほど、休みというのは少なくなる。年中休んでるお偉いさんもいるが、それは早めに死ねばいい。血の池に沈めてやる。
「不喜処…」
私はせっかくのお休みに一番嫌な地獄へときていた。不喜処地獄―――動物達に骨の髄までしゃぶられるという地獄だ。
不喜処の入り口に来た時点で中に犬や鳥や猿が見えた。犬、怖い。
近くで仕事をしていた獄卒を呼び止め、シロさんを呼んでもらうことにした。
数分後、変わらぬふさふさの白い毛に覆われたシロさんがとてとてと歩いてきた。
「あー!なまえさん!」
「し、シロさん…ストップ!!」
私は近づいてくるシロさんに待ったをかける。距離、約3メートル。
「これ以上は……」
ふるふると涙目になってきた。シロさんは少し困った様に辺りを見回す。
「とりあえず休憩所にいかない?」
不喜処の近くの休憩所のベンチ。端と端に私たちは座る。
「すみません、突然来て…」
「ううん、嫌われてると思ってたから嬉しいよ!」
シロさんはパタパタと尻尾を振って嬉しさを表現した。
「でも、どうしたの?」
それは当然の疑問で。私が不喜処に来た理由を聞いてきた。
「鬼灯様は動物に臆しない方が好きなんです」
「?」
「だから、私はシロさんと仲良くなります。鬼灯様に嫌われたくないから!」
「……鬼灯様のためなの?」
そう、シロさんと仲良くなれば…犬嫌いを治せば鬼灯様ともっと仲良くなれるはずだと、私は不喜処まで来たのです。
「だから、シロさん!仲良くなりましょう」
私はシロさんに向かって笑いかけた。それに答えるようにシロさんは短く吠え、私に少しだけ近づいた。
「………ッ!」
私は咄嗟に立ち上がり距離をとった。
やっぱり怖いものは怖いのだ。
君までの距離
複雑な心境だよ…
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