目をうっすらと開くと見慣れた天井が見えた。体はふかふかの布団にくるまれており、何とも言えない安心感が生まれる。どうして自室の布団にいるのか?と頭を動かし考えると、気持ち悪い金魚草が脳裏に浮かんだ。


金魚草の声が聞こえるなんて、どうしてこうなった。としか言いようのない事態が起こっている。


私は頭を抱えると、横から軽快な声が聞こえた。


「あ、なまえちゃん目が覚めた?」
「白澤様…」


何故白澤様がいるのか?という疑問は白澤様の手の中にある薬を見て消えた。いきなり倒れたのだ、鬼灯様が白澤様を呼んで下さったに違いない。


「すみません」
「いいよいいよ、原因は僕にもあるし」
「え?」


本当に私の耳は大丈夫なのだろうか。白澤様の口から信じられない言葉を聞いた気がした。


「どういうことです?」
「僕があげた飴食べたでしょ?」
「はい」
「あれ、金魚草で作ったんだけどさ…」


そんなものを食べさせたのか。気持ち悪い。
鬼灯様が余りにも金魚草を可愛がるので、私は金魚草を使った製品が嫌いだ。
白澤様はそのまま話を続ける。


「副作用があるみたいでさ。桃タロー君は金魚草の声が聞こえて、僕は聞こえなかった」


今日、桃太郎君が居なかったのはまさかそのせいじゃ…と私は考えた。


「戻す方法は?」
「研究中」
「爆発しろ」


私は容赦無く白澤の鳩尾を殴った。
何てものを私に飲ませたのだ。と、言うよりもそんなものを人に飲ませるなんて…桃太郎さんも災難だ。


「時間が立てば効果が切れて、戻るはずだからさ」
「そうですか…」
「金魚草に近づかなければ平気だろう?」
「そうですね」


金魚草に遭遇するのは中庭を通る廊下のみ。もしくは鬼灯様の部屋だ。暫くの間、そこを使わない事は可能だ。遠回りすれば、いくらでも回避しようがある。


「ところで、鬼灯様は?」


部屋にいるのは白澤様のみ。女の子の部屋にこんな危険物を置いて頼りにしている鬼灯様は何処へ行ってしまったのか。部屋をきょろきょろとしなくても、そう広くない部屋だ、隠れる様な場所もない。


「鬼灯なら金魚草に水あげてたよ」
「…そうですか」


部下が倒れたというのに、金魚草が大切ですか…。と少しだけ悲しい気持ちになった。
そこで私はふと、あることを思いつく。


「白澤様、あの飴、鬼灯様に食べさせたら喜びますかね?」
「………面白い事言うね、なまえちゃん」


白澤様は少しびっくりしたような顔をし、そしてすぐににんまりと笑った。


「うふふふ」


面白い事になりそうだと私は笑う。白澤様
もわくわくとしているようで、ポケットから白と赤のマーブルの飴を取り出し手で弄んだ。







悪戯のち悪戯

さぁて、どうなるかな!









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