「昨日の夜、何だか騒がしかったけど…何かあったの?」
「鬼灯様が変態だと言うことを再認識しただけです」
「失礼ですね、なまえさん」
「事実を述べただけです」


朝一の仕事を始めて少したった頃に閻魔様が昨日の夜の話しを振ってきた。そりゃぁ、廊下であんな大声を出せば起きていた者には聞こえていただろう。


「また鬼灯君…何したの?」
「少しばかりからかっただけですよ」
「襲われました」


閻魔様を間に挟んでいるから、直接手を出しては来れないだろうと私は鬼灯様の言葉を訂正する。あれは本気だった。


「遊んでいただけです」
「私の事は遊びだったのね!」
「本気ですよ?今晩、続きをしましょうか?」
「ごめんなさい、もう言いません」


少し悪ふざけをしたら、鬼灯様の目が本気で怖かった。閻魔様は自分から話題を振ってきたのに、鬼灯様の視線に怖じ気付いたのか話しに入ってこない。


「もう、鬼灯様のお願い事は聞きませんからね」
「問題ありません。最初から拒否権を与えなければ良いのですから」
「……鬼灯君、それ最低…」
「最低ですよね!閻魔様!」


私は閻魔様が小声で漏らした一言を見逃さずキャッチし、増幅して鬼灯様に投げる。もちろん、盾は閻魔様。


「何か?」
「ぎゃぁぁああ!!!」


鬼灯様は閻魔様に容赦無く金棒を突きつけ、横にはり倒す。閻魔様の悲痛な叫びが閻魔殿内に響きわたった。そして盾の居なくなった私と鬼灯様の距離をじりじりと詰め寄って来る。
目が本気すぎて怖い。喰われる。殺される…!


「冗談ですよ、鬼灯様!そんなに怒らないで」
「じゃぁ、今晩お相手してくれるんですか?」
「は?!そんな話してない!」
「拒否権は…」
「はいはい!頑張ります!」


私は命の危険に返事をしてしまった。鬼灯様は先ほどまで構えていた金棒を机の横に置き、上機嫌に書類に目を通し始めた。





拒否権は存在しない

どうしよう…どうしよう…





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