鬼灯様が西洋地獄への出張から戻られたと報告が来たのは、外も暗くなる頃だった。
私は仕事の帰りに鬼灯様の部屋にでも寄ろうと考えながら、目の前にある「鬼灯様がチェックしないと終わらない書類」の山を見てため息をついた。
また徹夜するんだろうな、と考え徹夜明けの鬼灯様を想像した所で思考を停止させた。さっさと終わらせて帰ろう。





「鬼灯様いらっしゃいますか?」


鬼灯様の部屋の扉をコンコンと軽く叩きながら中へと呼びかける。少しして、物音と共に鬼灯様が扉を開けた。


「おかえりなさい、鬼灯様」
「あぁ、なまえさん。ただいま戻りました。変わった事はなかったですか?」
「何も問題なかったですよ。書類が山の様だという事も変わってません」
「それは大問題ですね」


鬼灯様は苦い顔をされたが、すぐにいつもの表情へと戻る。


「なまえさんにお土産があるんですよ」
「西洋の?!何ですか!」


私は西洋地獄へは行ったことがない。それどころか現世でも海外なんて行かなかった。西洋のお土産・・・とっても素敵な響きじゃないか!


「ちょっと部屋の中に入って下さい」
「はぁーい!」


私はルンルンと鬼灯様の部屋へお邪魔する。鬼灯様の部屋へは時々来るが、いつ見てもいろんな物がある部屋だと思う。


「はい、これです」


鬼灯様の手には綺麗に畳まれた洋服が乗っていた。


「洋服ですか?」
「えぇ、なまえさんにきっと似合うと思って」


鬼灯様の手から洋服を受け取り、広げて見る。黒いワンピース。裾についたレースがひらひらと揺れる。それにつける形で白いエプロン。こちらもフリルがあしらわれ、とても可愛い作りだ。


「これは…メイド服というやつですか?」
「えぇ、サタン様デザインの特注です」
「何故…こんなものを?」
「なまえさんに是非着て欲しいからですよ」


鬼灯様の目は真剣だった。そんな顔をされても私はこんな恥ずかしい物は着ない。ただでさえ、普段は和服で洋服など着ないのだから無理なお願いだろう。


「それを着て頂けたら仕事が頑張れる気がするんですが…」
「着なくても鬼灯様なら大丈夫ですよ」
「いや、とっても疲れているのです…」


鬼灯様は食い下がろうとはしなかった。私は深いため息をついて腹を括る。


「1回だけですよ?」
「…!?着てくれますか!」
「1回だけなら…せっかくだし…」


ちょっと。ほんのちょっとだけ興味があるだけです。鬼灯様の趣味は分かり兼ねますが、1回ぐらいなら良いかなぁ、と私は思ったのです。


「じゃ、今すぐ着て下さい」
「今ですか?!」
「はい」
「わかりました…お風呂場お借りします。覗かないで下さいね」


私はしぶしぶと鬼灯様のお部屋のお風呂場へと向かった。念のため隠しカメラなどないかチェックしておこう。危ないからね。
とりあえず、不審な物は見つからなかったので、私は着物の帯に手をかけ着替えを始める事にした。




お土産は波乱の予感

サタン様って何者なのかな…すごいな…いろんな意味で。






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