鬼灯様が出ていった部屋にぽつんと残された私は、とりあえず白澤様にメールをしてから仕事へ戻ることにした。
鬼灯様が殆ど片付けてくれたとはいえ、仕事は次から次へとやってくる。


「なまえちゃん…さっき鬼灯君が凄い形相で出ていったけど……」
「あぁ、白澤様を殴りに行ったみたいですよ」


閻魔様は少し怯えながら私に聞いてきた。それに対し私はケロリと答える。


「何かあった?」


閻魔様は私に心配そうな顔を向けて問う。私は小さく息を吐き出し答えた。


「髪飾りを…白澤様から貰いました」
「それで鬼灯君が怒ってるの?」
「私の行動が軽率でしたし、外し忘れて鬼灯様の前に立ってしまったのも悪かったんですが……」
「うーん…なまえちゃんと鬼灯君って付き合ってないんだよね?」

「つ、付き合ってなんかないです!!」


閻魔様の発言に動揺し、声が上がってしまった。鬼灯様は尊敬してるし、お慕いしているが、恋仲などでは決してない。


「じゃあ、鬼灯君が悪い様に聞こえるな。なまえちゃんは、白澤君からプレゼントを貰っただけでしょ」

「でも、その行動が…」

「それに嫉妬したのは鬼灯君の勝手。なまえちゃんは悪くない」

「……」

「そんな顔しないで!」


閻魔様は私を励まそうとして下さっているんだ。そう思うと何だか目頭が熱くなってくる。


「ありがとうございます、閻魔様。たまには良い事言うんですね」
「たまにはって…」
「100年に1回ぐらいですかね!」


私はパッと顔を笑顔に変えて閻魔様にお礼を告げる。閻魔様は少し落ち込んだ様子だが、私の顔を見て閻魔様も笑ってくれた。


「どうしてそんなに鬼灯君の言い付け守るの?」
「上司ですし」
「ワシの言うとこ聞いてくれないじゃん」


閻魔様は口を尖らせ不服そうに愚痴を溢す。聞いてない訳ではないですよ、と苦笑いをした。


「あとは……」

「?」

「閻魔様には秘密です」


私は悪戯っぽく笑って見せた。閻魔様は不思議そうに首を傾げたが、私はそこで話を切り上げた。何となく気分も軽くなった様な気がする。
私は執務室に戻り、仕事を再開した。



閻魔様には言えないけれど、鬼灯様の言いつけを守るのは―――






鬼灯様が好きだから

何時からかは分からないけど、ずっと…







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