※ヒロインが出てきません。鬼灯様が酷いです。読まなくても繋がります。




(イライラする)


鬼灯は金棒をずりずりと引き摺りながら、桃源郷へと向かっていた。眉間には深いシワが刻まれ、周りの住人や獄卒達は見ない振りをして通りすぎていく。





「白澤さん…いますか?」


鬼灯はドスの聞いた低い声で「極楽満月」の扉を開ける。扉は勢いを失うこと無く、粉々に破壊された。


「…ほ、ほ、鬼灯さん」


中に居た桃太郎は、いきなり開いた扉に驚き、怯えた顔で鬼灯を見た。


「あの白豚は…?」
「は、白澤様なら外に…」


桃太郎は涙目になりながら、鬼灯の目的である白澤の場所を告げる。


「そうですか…」
「あの…何かありました?」


ゆらりと体を揺らし、外へ行こうとする鬼灯に桃太郎は恐る恐る声をかける。


「髪飾り…知ってますか?」
「あ…」


桃太郎はギクリとした。先程、なまえが来た際に白澤が渡していた髪飾りを思い出したからだ。


「知ってるんですね…?」


鬼灯はそんな桃太郎の行動を見逃さず、桃太郎にぐいっと詰め寄る。


「いや、渡してるのを見ただけで…」
「何故、阻止しなかった」
「知りませんよ!そんなの!」


鬼灯は容赦無く桃太郎に金棒を振り上げた。
その鬼灯の背後からボトボトと物を落とす音が聞こえる。鬼灯はそちらに気を取られ、金棒の照準がズレ、桃太郎の横の床をえぐった。
扉には白澤が立っており、持っていた高麗人参を床に落としていた。

鬼灯は桃太郎から白澤に標的を変え、金棒を床から引き抜くと、白澤を睨んだ。


「用件は分かりますよね?」
「なまえちゃんにあげた髪飾りのこと?」
「分かってるなら話が早い……」


鬼灯はぐっと金棒を握りしめ、白澤に向かって構える。


「イライラするので、殴られて下さい」


間合いを一気に詰め、金棒を振り上げ、白澤目掛けて全力で振り下ろす。白澤は後ろへ跳躍し、金棒を避ける。金棒は標的を失い、地面へと吸い込まれる。


「はっ!そんなに気に入らなかったの?なまえちゃんに似合ってただろ?」
「それが気に入らないんだよ!」


白澤は鬼灯を挑発するようにニヤリと笑う。余裕に構える白澤に、鬼灯は金棒を投げ付けた。


「当たらな……ぶへっ!」


金棒は白澤の横を風を切り裂き飛んでいく。白澤は金棒に気を取られて、その影に隠れて鬼灯が飛び蹴りをしてくるのを見逃し、見事に顔面に蹴りを受ける。


「間抜けな声ですね」
「うっさい!死ね!ぐはっ」


白澤の腹に蹴りを入れながら、鬼灯は白澤を見下した。


「なまえさんにちょっかいを出したことを、後悔するんですね」
「ぐ…っ!お前が…なまえちゃんに何もして…がっ…やらないから…!」


白澤を蹴り続けていた鬼灯は白澤の言葉に行動を止める。


「いつも仕事だけで…なまえちゃんの気持ちも知らないで……」
「何を…!」
「…何でさ、なまえちゃんはお前の言い付け聞いてるんだよ」


「……っ」


鬼灯は言葉に詰まる。白澤は腹を押さえながら、呼吸を整える。


「お前が後悔しろよ」


白澤は吐き捨てる様に鬼灯に言うと、固まってしまった鬼灯の隣をすり抜けて「極楽満月」の中へと戻っていく。
鬼灯は白澤が居なくなった地面を睨み付け、ぐっと唇を噛んだ。





理由なんていくらでも

理解してるはずだった…








-----
本当に申し訳ない…orz
趣味すぎました。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -