桃太郎さんを待ちながら、周りの兎を抱き上げ私は癒しの時間を堪能していた。
ふわふわの白い毛並みを撫でると、心地よく幸せな気持ちになる。桃源郷の兎は、温厚で噛んだり引っ掻いたりもしないのでペットに1羽欲しい。まぁ、無理な話だが。

私が兎を堪能していると、いきなり目隠しをされた。びっくりして振り払おうとすると、陽気な声が聞こえた。


「だーれだ!」
「…白澤様…」


薬草の香りがする大きな手、そしてこんな事をするのはただ一人だ。私はため息をつく。結局会ってしまった。白澤様の手を目の前から退けて、くるりと後ろを向くと、至近距離に白澤様の顔があった。


「ひゃっ」
「なまえちゃんと見つめ合うの照れちゃう」
「…馬鹿ですか」


私は白澤様の顔面をおもいっきりぐっと押し退けた。


「僕に会いに来てくれたの?」
「買い物です」
「じゃあ、早速中へ…」
「いや、桃太郎さんに頼みましたから大丈夫です!」


店の中に入ったら中々帰れなくなる。それは今までの経験で断言できる。


「しかたないなぁ…」


白澤様は諦めたのか、自分の白衣のポケットを探り小さな袋を取り出した。


「これ、なまえちゃんにプレゼント」
「はい?」
「出先で買ってさ、髪飾りなんだけど…きっと似合うから」
「いや、受け取れません!」


白澤様は簡単に渡してくるけれど、きっと高価なものだろう。そんなもの受け取ったら後が怖い。


「遠慮しないで。他の女の子にあげようとしたのにフラれちゃってさ。これ、処分するの勿体ないでしょ?」


白澤様は左の頬を指差しながら笑った。確かにうっすらと赤い跡が残っている。


「……私からは何もないですよ?」
「いいよ」
「ありがとうございます」


私は白澤様の手から袋をもらい、開けてみる。中には小さな赤い花がいくつか付いた可愛らしい髪飾りが入っていた。造りからしてやはり高級そうだ。


「本当に良いんですか?」
「うん、せっかくだから着けてよ!」


タダで貰ったのだから、それぐらいなら。と、私は髪の毛を軽くまとめ、髪飾りをつける。パチンと止めるタイプになっており、簡単に着ける事ができた。
左耳より少し上の位置に花が揺れる。


「どうですか?」
「可愛!我要吃飯!」
「?」
「あ、ごめんごめん。可愛いよ、とっても!」


にこにこと本当に嬉しそうに白澤様は誉めてくれた。その顔に私は少し恥ずかしさが込み上げてくる。あ、にやけてそう…


「お邪魔ですか?」
「邪魔だね」


絶妙なタイミングで桃太郎が薬を用意して戻ってきた。白澤様と軽く睨み合い、私に薬の入った袋を渡してくれた。


「ありがと」
「早く帰った方がいいっすよ」


桃太郎さんの言葉に私はハッとし、携帯の時計を確認する。思っていた以上に長居をしてしまったらしく、早く帰らねば鬼灯様に怒られてしまう。


「なまえちゃん、せっかくだからお茶しようよー!あいつなんか放っておいて」
「帰ります」


私は白澤様の誘いをきっぱりと断った。鬼灯様を放っておく?怖すぎて無理だ。
私は桃太郎さんと白澤様に軽くお辞儀をして、地獄へと帰路を急いだ。






真意の在処

やっぱりなまえちゃんにピッタリ似合ったね








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※我要吃飯…私が食べる
貴女を食べたい、とでも読んでください。(他に適切な表現を見つけたら差し替えます)

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