「桃源郷まで行ってきます」
「一人で、ですか?!」


鬼灯様は大きな声を上げて、書類から顔を上げた。私は平然と、「はい」と告げる。

昼の休憩から帰ると、鬼灯様が天罰鍋を作っていた。今日も亡者がぐるぐると煮られている。私は鬼灯様の周りにある、薬草をチェックしたら切れかかっているものが多数。
それを一覧にして、今から買い出しに行くのだ。緊急に薬の調合が必要になる場合だってあるのだから、ある程度はストックして置かなければ。


「鬼灯様はしっかり仕事して下さいね」


鬼灯様が天罰鍋を作っている間に、多数の案件が回ってきていた。
鬼灯様ににこりと笑いかけ、書類の山を鬼灯様の机に積み上げた。


「なまえさん、白澤さんにはくれぐれも近づかない様に!」
「はいはーい」


私は軽い返事をして部屋を出た。鬼灯様はいつも桃源郷に行くと言うとこの調子だ。




桃源郷は地獄と違い、緑豊かに穏やかな時間が流れている。
兎達がひょこひょこと足元に寄ってくる。ふわふわな毛並みが気持ち良さそうだ。


「あ、桃太郎さん!こんにちは」


仙桃の収穫に勤しむ、桃太郎さんを見つけて声をかける。桃太郎さんは手を止め、こちらに視線を向ける。


「あ!なまえさん!こんにちはっす!薬ですか?」
「はい、いつものお願いします」


鬼灯様に言われている様に、なるべく白澤様に合わないように、薬はいつも桃太郎さんに頼むようにしている。桃太郎さんにメモを渡して、薬を取りに行って貰う。


「じゃあ、少し待っててくださいね」


そう言い残し、桃太郎さんは白澤様の店「極楽満月」へと帰っていく。
私は桃太郎さんが戻るまで近くの兎と戯れる事にした。





穏やかな毎日に

変わりない、変わらない









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