鬼灯に手を引かれ閻魔殿の食堂へとやって来た。私にはあまり馴染みのない品が、数々並んでいる。


「地獄の料理は面白いね、興味深い」
「冷めない内にどうぞ。私はちょっと電話をしてきます」


鬼灯が適当に頼んでくれた品々がテーブルに並ぶ。私は一人で関心した。


「鬼灯はまだ仕事?」
「すぐ戻りますよ」


鬼灯は携帯を片手に食堂を出ていってしまった。私は鬼灯に進められた料理を一人口に運び、鬼灯が戻るのを待つことにした。




「戻りました」


鬼灯は数分で戻ってきた。私の向かいの席に座り、自分の箸を持つ。


「おかえり、鬼灯、これ何?血の味がするよ」
「あぁ、血の池で採れる植物です。鉄分が豊富で女性に人気です」
「ほう」


血の味がすると言いながらも、もぐもぐと気にせず口へ運ぶ。そんな私を見て鬼灯は少し驚いた様だった。


「天国の方は嫌う味なんですが、なまえさんは平気なんですか?」

「美味い、不味いはあるけれど、何でも勉強でしょ。どんな物でも、味を知らなきゃ美味いものが美味いと分からないからね」

「勤勉ですね」
「それ以外の楽しみがないからね」


長く生きれば楽しみなんてモノは限られてくる。食というのはその内の1つで、料理というのは風土や文化で異なるもので特に面白い。
私は次の料理へと箸を伸ばした。




「なまえ…!」


鬼灯と談笑しながら夕食を食べていると、今一番会いたくない相手、白澤が食堂に姿を現した。


「……!何しに来たんだ」
「何って…なまえちゃんを迎えに」
「頼んでないし、どうして」
「私が呼んだのですよ」


私と白澤が言い争う中で、さらりと鬼灯が口を挟んだ。


「コイツから電話来たから、急いで来たんだよ」
「鬼灯…!」
「なまえさん、謝るんでしょう?」


私は鬼灯の言葉に、言葉が出なくなった。謝るとは言った。言ったのだが、そう簡単に本人を前にして言葉が出てくる筈もない。


「なまえちゃん、僕も悪かったから帰ってきて?」


白澤が眉を下げて、私に弱々しい声を掛ける。


「……違う…」
「?」
「違う…!白澤は悪くない」


違う。違う。私は白澤に謝って欲しい訳じゃない。自分の気持ちが分からなくて、私の瞳からはボロリと涙がこぼれ落ちた。


「なまえちゃ…」
「ごめん、ごめんね…」
「もう、大丈夫だから。帰ろう?」


白澤は私の頭を優しく撫でて、にこりと笑ってくれた。私はその笑顔に胸が熱くなるのを感じた。


「本当に世話の焼ける二人です」
「今回はすまなかった」
「別にいいですよ。なまえさんのお願いでしたし」


鬼灯と白澤は少し険悪なムードになりかけて居たけど、喧嘩に発展する事は無かった。白澤は私の手を握って、ゆっくりと歩き出す。


「じゃ、世話になったね」
「あ、鬼灯……」


私は白澤をくいっと引き留め、鬼灯へと声をかける。


「何です?」
「ありがとう」


私はにこりと笑うと鬼灯も短いため息を吐き出して、柔らかく笑った。


「白澤さんが嫌になったらいつでもおいでなさい」
「うん」


白澤は鬼灯の言葉が気に入らなかったのか、「いくよ」と言って私の手を引いた。




天国までの帰りに道は無言だった。何となく、話を切り出すタイミングを見失ってしまったのだ。


「鬼灯に…何言われた?」
「特に何も」
「そう…」


先に声を出したのは白澤だった。足も止めずに話しを振ってきた。しかし、会話はそれ以上広がりを見せることは無かった。


「ねぇ、白澤」
「ん?」


その静寂を破るために、今度は私が口を開く。白澤は足を止め、私ほ方へ振り返る。深呼吸を1回して、ドキドキとうるさい心音を落ち着かせる。



「今度、手繋いで、遊びに行こうか」





この手の暖かさは…

何千年も変わらない








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眠くて文章gdgdでしたね。鬼灯様となまえさんの距離感が書きたかったのですが、思いの外近かったですw


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