「白澤の馬鹿」


そう言って私は極楽満月を飛び出した。いつもの喧嘩。すぐ謝れば済む事だったのに、今日は何故かとても悲しかったのだ。もう日が暮れる。どこへ行こう。




行く宛なんか無くて、結局地獄まで来てしまった。一人で来ることなんてないので、道に迷いそうになった。しかし、閻魔殿なんて某ランドの様なもの。行き方なんて書いてある。


「鬼灯、かくまって」
「どうしたんですかいきなり…」


広間に着く前に廊下で鬼灯の姿を見つけた。鬼灯に容赦無く飛びつけば、鬼灯は少し驚いた顔で私を見た。身長差がありすぎて見下されている様で気に入らないが。


「白澤と喧嘩した」
「喧嘩の原因は?」
「白澤が女を連れ込んでね…その女が私を笑ったんだ!だからちょっとボッコボコに…」


鬼灯に喧嘩した事を素直に告げる。鬼灯は少しあきれた様な顔で私の話を聞いてくれた。


「それを白澤さんに咎められたと」
「少し遊んだだけじゃないか。鬼灯なら分かってくれるだろ?」
「そうですね、分かります。でも…」


鬼灯はうなずきながら、同意してくれたが、一端言葉を切って私を見つめた。


「白澤さんが咎めた気持ちも分かります」
「なんで?」
「女の恨み、というのは恐ろしい」


鬼灯は少し屈んで、私の目線と自分の目線を合わせると真剣な顔で言ってきた。


「あとでなまえさんに危害が及ぶとも限りません。だから白澤さんはなまえさんにそんな危険な行動をとらないで欲しかったのでしょう」
「うっ」


それは考えていなかった。あんな小娘、自分でどうにかできると思っていたから。と、いうより出来るもの。しかし、確かに軽率な行動だったとは言えるだろう。


「早く謝った方がいいですよ」
「……わかってる」


私は鬼灯と視線を合わせて居られなくなり、床に視線を落とした。
分かってる。そう答えたものの謝れない。何故かタイミングを外してしまう時もあるんだ。
私がじっと考え込んでいると鬼灯は私の頭に手を置いて、軽く滑らせた。そして、優しい声で言った。


「お腹空いてませんか?夕食を食べましょう」
「え…」
「お腹が空いてると落ち込みます。夕食でも食べて、落ち着いてから謝ればいいじゃないですか」
「そ、だね…」


鬼灯も気を使ってくれたんだな。と思うと、申し訳ない気持ちになった。鬼灯はすっと手を出すと、私の手を掴んで歩き出した。白澤よりごつごつしてて大きい手。それでも優しい手。


(最近、白澤と手…繋いでないや)


白澤は繋ぎたがるが、私が恥ずかしくてふりほどいてしまうのが殆どだった。子供扱いされているようで気に入らなかった。
でもあれは、きっと白澤なりの優しさだったのかもしれない。
仲直りしたら、手を繋いで何処か行こうか。そんな事を考えながら、私は鬼灯の後を歩いた。






気づかなかった事

相手を全部知っているなんて事は絶対に無い







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まさかの続きモノ。天国組出てきてないじゃないか!これは白澤夢なはずです…はず…orz
ヒロインの性格が引き続き行方不明。

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