「今日から助手の仲間入りの桃太郎君」
「宜しくお願いします」
「……よろしく」
なまえさんの第一印象は無口で大人しそうだな、だった。蓋を開ければそんなことはなかったが、少しだけフワフワした人だという事が分かった。
「あー…」
なまえさんが一人で鍋をかき混ぜていると思ったら、いきなり声を上げた。
「どうし…うっ」
何かあったのかと、近くへ行くと鍋から凄い匂いがする。鼻腔を刺激し、目にも染みる。鍋の中身は真っ赤なスープ。
「唐辛子が…いれすぎた……」
なまえさんは慌てる様子もなく平然と鍋をかき回す。そして思い付いたかの様に、つぶやいた。
「白澤に食わせよう」
見た目からして絶対に食べられそうにない赤さだ。白澤様も食べはしないだろう。
白澤様が外出から帰ると、何の迷いもなくなまえさんは白澤様にスープを出した。
「食べなよ」
「何?なまえちゃんが作ってくれたの?」
「白澤の為にな…」
「!?」
それを聞いた白澤様は見た目の色なんか気にせずぐいっとひと飲みした。
「美味!」
白澤様はにこにこと顔色を変えずに食べきった。そして、その器に容赦なくなまえさんが追加のスープを流し入れる。
「なまえ…」
「まだあるよ、白澤!」
なまえは見せたことの無いような笑顔で白澤様に笑いかける。
白澤様はその笑顔に釣られるように苦笑いをした。女の子のお願いは断れないってことなのだろう。
「なまえさん、白澤様が死にそうだよ」
「……桃太郎も食べる?」
さすがの白澤様でも額に汗が浮かび、耳が赤くなってきている。若干、口も痛そうだ。俺は仕方なく助け船を出すことにした。が、定員オーバーでした白澤様…
「遠慮します」
「なまえちゃんが作ったものを断るの!?」
「うわ!白澤様!」
白澤様は俺の首に腕を回し、俺の口にスープの入った器を押し付ける。
「…!!」
口内に侵入したスープはピリピリと辛さを撒き散らしながら、暴れまわる。
「っ…!ごほごほっ」
俺は余りの辛さにむせた。唇がひりひりと痛い。
「白澤、桃太郎に何するんだ」
そこに助けに入ってくれたなまえさん。元々の原因は貴女です。何て、口が裂けても言えない。
「だってなまえが作ったスープを…」
「良く食べたねー白澤…」
「…へ?」
「私は味音痴ではないよ。見た目的に食べられないのも分かる」
白澤様はぽかんとし、なまえさんは仕手やったりと言わんばかりにニヤリと笑った。
「ちょ、なまえちゃん!」
「あははは!白澤は面白いなぁ!」
笑い転げるなまえさんに白澤様が悔しそうに抗議の声を上げる。
そのどさくさに紛れて、俺は残ったスープをそっと処分した。
食べ物は大切に
たまには失敗もするさ
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どっちかって言うなら、白澤夢な、はず(笑)
複数でワイワイしてるのは書いてて和む!