夜の闇が一層濃くなり、生き物が眠りにつく時間。なまえの耳に届くのは、軋むベッドの音に、女性の高い声。いつもの事だと分かっていても、耳を塞ぐ。
どうか、早く朝になりますように。
朝の清々しい空気が部屋の中に満ち、太陽の光はキラキラと光る。
「…なまえ…早…」
「白澤、早。だるそうだね」
「ん、ちょっとね…」
そんな中、自室から出てきた白澤はぐったりとして足を引き摺り、壁に手をつきながら出てきた。
理由を誤魔化しているが、私には分かっている。
「お酒飲んで女連れ込んでるからだよ」
「…バレてたか」
「バレてるよ」
私と白澤の自室は小さな薬草の保管庫を挟んで横並び。同じ建物内、物音でそれなりの行動が分かる。
「おはようございます、白澤様、なまえさん」
「あ、桃太郎、おはよう!」
「…白澤様が死んでますが」
「放っておけ」
そこへ桃太郎が現れた。
白澤は飲み過ぎな様で、床に転がっている。
桃太郎は見かねたのか白澤の為に黄漣湯を作り始めた。
「あ、桃太郎…今日の夜暇か?」
「えぇ、まぁ」
私は思い付いたかの様に桃太郎へと話しかける。
「良かったら桃太郎の家行っていい?」
「!?」
「だー!!二人きりは駄目ー!」
床に転がっていた白澤はがばっと起き上がり叫ぶ。
桃太郎もびっくりしたのか手に持っていた茶碗を落としかけていた。
「チッ」
「舌打ちしない!どうしたのさ急に!」
私は盛大に白澤に舌打ちしてあげた。白澤はどうにか私を説得しようと試みてくる。
「白澤が夜煩いからー」
「!?」
「丸聞こえなんだよ、馬鹿」
気づいてなかった筈はないのに、白澤は驚いた顔をした。
「……桃タロー君、なまえに何かしたらどうなるか…分かってるよね?」
「……はい…っ」
「白澤…自分の行動を改めてから言え」
白澤は自分の行動を改める気はないのか、桃太郎へ釘を指す。
しかし、白澤は私の一言にぐっと言葉を飲んだ。
「でも、なまえは僕の特別だから…っ」
「嘘をつけ!白澤は私の事なんてもう飽きたのだろう?」
「あぁちょっと!喧嘩は駄目ですよ!」
私と白澤の言い合いが激しくなってきたところで、桃太郎が止めに入った。
「白澤様はもう少しなまえさんの事を考えて行動してください」
「・・・・・・わかったよ。ごめんね、なまえちゃん」
「ん、私もごめん」
お互い謝って、今回の件はこれで終了。と、なるはずだったのだが、今回は少しだけ意地悪をしてやる。
「でも、今日は桃太郎の家に行くから」
「・・・・・・・・・」
あ、白澤と桃太郎が固まった。
「「なんで?!」」
「せっかくだから1日ぐらい行ってみたい」
にこりと私は笑って二人の顔を見る。そして、二人は仲良く声を上げる。
「「えぇええ!!!」」
飽きる訳ないだろ
こんなにも幸せな日常に
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落ちが行方不明。
白澤様に女の子を連れ込んでほしかっただけという作品(笑)