見た目だけで甘いと分かる、白いデコレーションケーキが目の前にはある。イチゴが等間隔に並び、色を添えているが、それ以外は真っ白な生クリームが乗っているだけだ。
その一角をなまえちゃんの持つフォークが抉っていった。フォークは少しの抵抗を感じながら簡単に刺さった。白いクリームは歪み、ぐちゃりと潰れる。そしてフォークに刺さったケーキをなまえちゃんは口へと運んでいく。
なまえちゃんの小さな口には少し大きめに切り取られたそのケーキは、なまえちゃんの口端にクリームを残しながら、口の中へと消えていった。


「美味しい!」
「気に入ってもらえたなら良かった」


手を頬に当て、目をきらきらと輝かせるなまえちゃんを見て僕も笑う。


「でも、このケーキ買うの大変じゃなかったですか?地獄で大人気だって聞きましたよ?」


なまえちゃんはケーキの入っていた箱に目を移し、僕に問いかける。
なまえちゃんが今食べているケーキは、今、地獄で大人気のケーキなのだ。買うために2時間待ちは当然とまで言われるほど人気で、連日甘いもの好きの女の子が並ぶという。


「そんな事なかったよ。なまえちゃんに喜んで欲しかったからね」


実を言えば、ケーキショップの店員の女の子を口説き落とした。しかし、その事実はなまえちゃんには伏せておく。僕は、悪い男なのかもしれない。しかし、彼女に喜んでもらうために使える手は全て使う。


「ありがとうございます、白澤様」


ほら、この笑顔が手に入るならお安いご用さ。僕は、なまえちゃんの顔を見ていたら何だか意地悪したくなってきた。


「じゃ、あーんしてよ」


にこにことケーキに夢中ななまえちゃんに声をかければ、驚いたような顔で僕を見た。なまえちゃんのフォークの先には次に口へと運ばれるであろうケーキが刺さっている。


「はい、あーん」


それを見て、僕は口を開ける。
僕の口へとそのフォークを運んでおいでと、口端を緩ませながら、僕は口を開いた。


「ほら、早く」


顔を赤くして、なかなか反応してくれないなまえちゃんに催促をする。


「あーん」


再度口を開けば、なまえちゃんは遠慮がちに僕の口へとケーキを運ぶ。パクリと口に入れれば、上品な甘さが口の中へと広がった。
流石、人気の店だけある。パティシエの腕はシンプルなショートケーキが一番分かりやすいと聞いたことがある。


「ん、好吃!」


僕は口の中のケーキを胃へと流す。なまえちゃんを見るとフォークを手に持ったまま固まっていた。


「赤くなっちゃって可愛い」
「…なっ」


僕の言葉で我に返ったのか、なまえちゃんは恥ずかしさを誤魔化す様に、ケーキへとフォークを突き刺した。


「次はなまえちゃんの番ね」


動揺しているなまえちゃんからフォークをするりと奪い取ると、僕は少し大きめにケーキを差し、なまえちゃんの口の前に差し出した。


「はい、あーん」
「う…」


なまえちゃんは恥ずかしそうに視線を泳がす。僕はなまえちゃんの唇に触れるか触れないかの位置までケーキを近づけ、首を少し傾けてお願いをする。


「口開けて?」


なまえちゃんは躊躇いがちに口を開ける。少し大きめに取ったケーキはなまえちゃんの口に入り切らず、唇にクリームがべっとりとついた。なまえちゃんの赤い唇に白いクリームが綺麗に映える。
何とか口に全てのケーキを入れ、唇についたクリームをなまえちゃんは舐め取った。その仕草が色っぽく、僕は少し興奮を覚える。


「美味しいです」


そして、感想を一言。
まだ少し口の周りを気にしているのか、なまえちゃんの舌が行き来する。


「くすくす…なまえちゃん、まだクリームついてる」
「え?どこです―――」


僕は口端についたクリームを指摘し、なまえちゃんの唇に自分の唇を寄せた。


「やっぱり美味しいね、このクリーム」


ぺろりと唇を舐め上げると、なまえちゃんは顔を真っ赤にさせて涙目になっている。少しやりすぎただろうか?しかし、そこが可愛いと思ってしまう辺り、僕も相当意地が悪いらしい。


「ごめん、ごめん」


苦笑いをすれば、なまえちゃんの力の入っていないパンチが飛んできた。僕の胸の辺りをポカポカと叩いてくる。


「ほら、怒らないでよ」


なまえちゃんの頭をぽんぽんと叩けば、なまえちゃんは大人しくなった。少しむすっとしているが、照れているだけだ。


「お茶入れ直すね」


僕は空気を変えようと、冷えてしまったお茶のカップを持って椅子から立ち上がった。






二人のティータイム

本当、可愛いんだから










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白澤様がただの変態な件。
久しぶりに目線を変えたら楽しかったです〜

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