冬から春に季節は移ろい行く。地獄では大きな変化は無いにしろ、現世と同じで季節は巡る。


「暖かいですねー」
「そうだねぇ〜」


季節は春へと向かい、日差しは柔らかくなり始めた。そんな日に私とシロさんは不喜処近くのベンチに一緒に座っていた。シロさんが散歩に行くとのことだったので、一緒に等活地獄を一周りしてきた所だ。
私は少し疲れているが、シロさんは疲れなんか見せず、まだ歩き足りないとでも言うように、先程からあたりをきょろきょろと見回していた。


「シロさん、鬼灯様のところにでも行きましょうか」
「それいいね!!遊びに行こうよ〜!」


待ってました!と言わんばかりに、シロさんは尻尾を振って私の言葉に応える。ベンチからぴょんと飛び降りて、私を振り返る。私は少し重い足に力を入れ、閻魔殿に向けてシロさんと一緒に歩き出した。







「鬼灯様いらっしゃいますか?」
「鬼灯様こんにちは〜!」


ひょっこりと鬼灯様の執務室を覗くと、鬼灯様の頭が見えた。机にうつ伏せに顔を伏せており、ゆっくりと肩が上下していた。


「あれ?」


不思議に思い近づいてみると、腕を枕代わりにして小さな寝息を立てていた。


「寝てるね」


鬼灯様が仕事中に居眠りなんて珍しい。それほどまでに疲れているのだろう。起こすのも悪いと私はシロさんへ視線を移す。


「シロさん、今日は戻りましょうか。鬼灯様もお疲れみたいだし」
「残念だなぁ…」


しゅんと耳としっぽを垂らし残念そうにシロさんは小さく鳴いた。
私たちは静かに鬼灯様の側を離れる。


「ん…んん…」


物音を立てない様に注意したつもりが、鬼灯様を起こしてしまったらしく、鬼灯様が小さく唸った。


「あ、鬼灯様が起きた」


シロさんの声で鬼灯様は私たちの存在に気づき、こちらへ視線を向ける。


「……来ていたんですか…すみません、寝ていた様で。ご用件は?」


少し眠そうに目を擦り、あくびをかみ殺したのが分かった。鬼灯様が起きたことで、シロさんはうれしいのか尻尾を振っている。


「鬼灯様遊ぼう〜!」
「し、シロさん!鬼灯様はお疲れの様なので、今日は帰りますね…!」


シロさんが鬼灯様の足下に駆け寄ろうとしたのを、私はとっさに引き留めた。この場は早々に立ち去るのが良いと思ったからだ。


「ちょっと待って下さい」


私がシロさんを抱き抱え、執務室から立ち去ろうとした所に鬼灯様の声がかかる。


「気分転換に付き合ってください」


鬼灯様のお願いを断れる筈がなく、私はただ頷き、シロさんは私の腕の中から抜け出し、鬼灯様に駆け寄った。







私たちは再び不喜処近くのベンチへと戻って来ていた。そこには夜叉一さんとクッキーさん、その子供達が居た。シロさんは子供達と楽しそうに戯れ、それを夜叉一さんとクッキーさんは幸せそうに眺めている。


「シロさんは楽しそうですね」


さらにその光景を私と鬼灯様はベンチに座り見ていた。犬達が戯れている姿は、とても可愛く癒される。鬼灯様は楽しそうにシロさん達を見ていた。


「本当ですね、ちびっ子達もかわいいです」


私は鬼灯様の言葉に頷き、まだまだ小さい子犬達を見た。ぬいぐるみの様にふわふわでとても可愛らしい。


「日差しも暖かくて気持ち良い…で…す…」


鬼灯様の言葉が途切れ途切れになり、私はどうしたのかと鬼灯様の方を見ると、鬼灯様はうとうとと、揺れていた。


「………!」


そして私の膝の上に倒れてくる。ちょうど膝枕の形になった。私はびっくりして肩に力が入ったが、すぐに力を抜いた。


「鬼灯様…?」


小さく声をかけるが、鬼灯様からは寝息が小さく聞こえるだけだった。


「寝てしまわれた…」


私は鬼灯様が転がり落ちない様にそっと手を添える。
少し離れた所で、私たちに気づいたシロさんが声を上げようとしたが夜叉一さんが止めに入った。私は唇に人差し指を当てシーっとジェスチャーをした。





つかの間の休息

ゆっくりのんびり過ごす日もあって良いですよね。







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暖かくなってきました!


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