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ふわりと風が吹き、振り返れば、唇に温かさと柔らかさを感じる。

目の前に黒が落ちる。

キスをされたのだと理解するまでに、約2秒。ぺろりと唇を舐められる感覚で意識が目の前の黒を、鬼灯様だと認識した。


「どうしました?ボーッとして」
「いえ、びっくりしました。鬼灯様がいきなりキスしてくるから」


私と鬼灯様は恋人同士ではあるが、今は職務中。鬼灯様は公私混同は一切しない。それなのに、今回の行動は何事なのか。


「したくなったんですよ」


いつもの無表情で鬼灯様は答える。しかし、頬に熱を帯びているのが私には分かった。


「行動するまえに言ってくださいよ」


キスぐらいしますから。
鬼灯様は誤魔化すように手元にあった書類に手を伸ばし、判を捺し始めた。
私も止まっていた手を動かし始める。


「…なまえさんに不意討ちした時の顔が可愛いのですよ」


鬼灯様は独り言の様に、ポツリと呟く。私の耳にもしっかりと届き、顔に熱が集中する。


「変なこと言わないでください」
「正直な気持ちです」


私は顔が赤くなるのを隠すために、少しうつむき加減に鬼灯様から目線を外す。


「ほら、可愛い」


鬼灯様の纏う空気が柔らかく変化する。クスクスと声を殺して笑う鬼灯様は嬉しそうだった。


「鬼灯様ばっかりズルいですよ」


今は仕事の最中。そんな事は百も承知だ。
私は仕返しとばかりに、鬼灯様に抱きついた。顔を見られない様に、鬼灯様の肩にぎゅっと顔を埋める。


「なまえさ、ん?」
「鬼灯様、ドキドキしてますね」


ピタリとくっついた胸から鬼灯様の心音が聞こえる。いつもより早く波打つ心音は私の心音と重なり、ドキドキと今にも聞こえそうな程だった。


「なまえさんに抱きつかれればドキドキしますよ」
「嬉しいです」



私は鬼灯様の肩に埋めていた顔を上げて、鬼灯様の顔を見た。
お互いに赤く染まった頬が、何だが愛おしくて顔を見合せて笑った。そして、鬼灯様の唇に私の唇を重ねる。


「仕事中ですよ」
「したくなったんです」


先ほどとは逆の立場で答えれば、鬼灯様は苦笑いをした。






愛しくて

誰かに見られたらどうしましょうか?困りますね










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【饅頭(仮)様リクエスト】
鬼灯様の甘夢。

私の精一杯の甘さでした(^q^*)控えめすぎる!
初期の頃のふんわりした書き方を目指したんですが、いつもとあまり変わらず……

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