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鬼灯様が和漢薬の研究に使っている部屋で私は一人、鍋をかき混ぜていた。
片手にレシピを持ちながら、鍋の中へと材料を投げ入れていく。

「…蜘蛛の足を1本…亡者の血を500ccと…」


グツグツと煮立った鍋にぽちゃりと音を立てて、材料達は次々と飲み込まれていく。


「何を作っているんです?」
「白澤様に差し上げるプレゼントを少し…」


そこへ鬼灯様がやってきて鍋の中をのぞき込んだ。私はにっこりと笑い、鍋をぐるりとかき混ぜる。


「……先ほどから見ている限り、痺れ薬の類ですよね」
「あ、やっぱり分かっちゃいます?」


そう、私の作っているものは痺れ薬。薬に詳しい鬼灯様にはすぐにバレてしまった。
鬼灯様は大きなため息をついて机の上にあった書類を手に取った。


「毒を盛るのは良いですが、自分の仕事を片づけてから作りなさい」
「はぁい」


私がやり途中にしていた書類をまとめて鬼灯様は部屋を出ていった。その背中に届くか分からなかったが、私は軽く返事をする。
最後に鍋をかき混ぜて私の薬は完成した。





今日の分の仕事を片づけて、私は天国へと向かっていた。白澤様に先ほど作った「プレゼント」を届けるためだ。
極楽満月の扉を上機嫌で勢い良く開ける。同時に薬草の香りが鼻を掠めていく。


「白澤様〜!」
「なまえちゃん、いらっしゃい」


扉の向こうには笑顔で手を振る白澤様。今日もいつもと変わらぬ顔で笑っている。私は白澤様に近づくと白澤様の前でラッピングしてきた袋を取り出した。


「あのですね、今日は、プレゼントを持ってきました」
「わ!嬉しい!ありがとう、なまえちゃん」


白澤様は嬉しそうに手を出すが、私はそこに袋は渡さず、自分の腕の中に戻す。


「それでですね…お願いがありまして…」


私は上目遣いで白澤様を見上げると、白澤様は嬉しそうに聞き返してくる。


「ん?なぁに?」


白澤様は私の顔にずいっと自分の顔を寄せ、にこりと女の子を落とす時につかう甘い顔で笑った。


「もふらせてください」
「え?」


私が真面目な顔で言うものだから白澤様は拍子抜けした顔で声を漏らした。


「神獣姿で、もふもふさせてくれたらあげます」
「なまえちゃんになら喜んで!そのまま空中デートしちゃう?」


白澤様は私の腰に手を回して、自分に引き寄せる。近かった顔が更に近づき、妖艶に笑ってみせた。


「いや、デートはいいです」
「ちぇ…」


白澤様はつまらなそうに唇を尖らす。私から手を離して、白澤様は目を閉じると、神獣の姿へと変化していく。
ふわりとした毛並みに6つの角、体の目は少し気持ち悪い気はするがもう慣れた。


「さ、どうぞ」
「も、もふ…!」


ふわふわの毛並みが私の心を奪っていく。抱きつきたい欲求を押さえて、私は白澤様へのプレゼントとして持ってきた袋を開け、中からクッキーを取り出す。そして、白澤様の口元へ持っていった。


「はい、白澤様。クッキーですよ、あーん」
「あーん!」


あーんと声をかければ、白澤様は口を開ける。私は白澤様の大きい口にクッキーを1枚入れる。


「美味しいですか?」
「ん、んん…おい、しい」


白澤様の言葉ははっきりとしない。人間の姿だったらきっと微妙な顔をしているだろう。


「美味しすぎて痺れます?」


確信犯の私は怪しくにっこりと笑い、白澤様の首に腕を回してぎゅっと抱きついた。


「な、なに…入れたの…か、な?」
「痺れ薬です。もふもふをしっかり堪能したかったので、白澤様は大人しくしてて下さいね」


白澤様はぐったりと私の肩に頭を乗せる。ふわりと毛が頬を撫で、くすぐったい。


「そんなことしなくても、なまえちゃんのお願いならいくらでも聞くのに」
「そうですか?じゃぁ私の前では神獣の姿でいてくれませんか?」
「それは…ちょっと…」


白澤様は困った様な声で答える。


「だから盛らせてもらいました」


私が楽しそうに言うと、白澤様が苦笑いするのが分かった。


「なまえちゃん…ちょっと鬼灯に似てきた?」
「ふふふ…どうでしょうね」


小さく笑えば、白澤様も小さなため息とともに笑った。


「まったく…嫌なところが似たね」





地獄流、恋の秘薬

素直に好きなんて言わないですよ、絶対。









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【碧様リクエスト】
白澤様に冗談で毒を盛る

何種類か書いてこれに落ち着きました!極楽満月シリーズでもやりたい^^

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