なまえさんが喜々として私の元にやってくる時は、大抵くだらないことを考えついてやってくる。今日も今日とて仕事終わりに執務室に駆け込んできた。


「鬼灯様、今日は節分なんですって!」
「そうですね、それがどうかしましたか?」


極卒達が現世の理不尽な行事に憤慨する今日は節分。私たち鬼にとって気にする行事でもない。


「恵方巻きって知ってます?」


得意げな顔でなまえさんは私の顔を伺う。


「えぇ、知ってますよ」
「じゃじゃーん!買ってきました」
「……はぁ」
「何ですかその顔!」


がさがさと手に持っていた風呂敷から袋を取り出す。現世のスーパーにでも行ってきたのか、その中には2本、恵方巻きが入っていた。


「1本食べられるんですか?喋ってはいけませんよ?」


女性が食べるには些か大きい恵方巻きをなまえさんは一人で食べる気なのだろうか?心配になって聞けばなまえさんは自信に満ちた表情で恵方巻きを掴んだ。


「分かってますよ!見ててくださいね」


なまえさんは大きな口を開けて、恵方巻きを銜える。


「むぐぐ…」
「ほら、ちゃんと噛んで」


勢い良く口に入れたものの、なまえさんは一向に進んでいかない。もごもごと口を動かしているが、上手く噛めない様だった。


「…ぅ…むぅ…」
「……」
「ん…んん…」


苦しそうなくぐもった声は、何とも言えない気分にさせる。


「エロいですね」
「ぐっ!」
「あぁ、駄目ですよ」


つい本音が出てしまった。その言葉に反応するように、なまえさんが恵方巻きを噛み切ろうとしたので私は慌ててなまえさんの恵方巻きを押さえ、口に押し込んだ。


「ちゃんと食べて下さい」


にこりと笑うとなまえさんは涙目になりながら再度もごもごと口を動かし始めた。




幸せになるために

私は切って食べますね







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20分制作。ついったで恵方巻きに盛り上がったのでw

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