年末年始というものはどうしても亡者が増えるものだ。特に叫喚地獄の人口はぐっと増える。忘年会に新年会と、酒の絡む席が増えるからだ。
その為、裁判に必要となる資料は膨大に増える。極卒達はバタバタと資料を抱えながら駆け回っている。私もその中の一人だ。
手に資料を抱えながら、棚から必要となる巻物を抜いていく。棚には無数の巻物が並べられており、探すだけでも一苦労だ。
私はお目当ての巻物を見つける。その巻物は棚の上の方にあり、私の身長では到底届かない。私は近くに置いてある足場を使う事にした。
手に持っていた資料を床に置き、足場を引っ張り持ってくる。足場は2段で、それほど高いものではない。私はトントンと足場を上り、巻物に手を伸ばす。
足場の2段目に立っていても、巻物には少しばかり届かない。背伸びをすればギリギリ届くか、という所。少し危ない気もしたか大した高さではないし、一瞬背伸びをするだけ。落ちる事はないだろう。
「よっし!」
私はぐっと背伸びをして手を伸ばす。指先に巻物が触れる。そして、ぐらりと視界が歪む。
「あ……!」
倒れると意識出来たときには既に体は傾き始めていた。後に続くであろう衝撃に身構え、目を閉じた。
しかし衝撃は軽いもので、代わりに馴染みのある香りに包まれた。
「大丈夫ですか、なまえさん」
「鬼灯様…助かりました」
顔を上げれば、上司の顔。私は鬼灯様に抱き止められていた。
「えっと、鬼灯様…裁判は?」
「なまえさんの資料が届かなかったので、取りにきた所です」
「あ!すみません!今すぐ用意を…!」
私は鬼灯様の腕の中から出ると、次の資料のある棚を目指して駆け出す。しかし、先ほど床に置いた資料に足を取られた。
「うわぁ…!」
「……っと!」
そしてまたしても鬼灯様に抱き止められる結果になった。
「まったく…」
「…すみません」
「私が取ってきますから、なまえさんは資料を運んで置いてください」
「はい…」
私は資料の一つもしっかり用意できない事に少し凹み、しょんぼりとうなだれる。
鬼灯様はそんな私を見て、私の肩にぽんと手を置いた。
「今回は良く頑張ってますね。次も頑張って下さい」
「……はい!」
その一言で私の気持ちは切り替わり、床の資料をまとめて閻魔様の元へ急いだ。
「まったく、単純ですね」
褒めて伸びるタイプ
早く失敗を挽回してもらわないと…
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何の変哲もない日常。