現世で今日は「クリスマス」という日だ。クリスマスの本来の意味はキリスト教での祭日だが、日本では単純にプレゼントを貰ったり、パーティをしたり楽しむ日として浸透している。

地獄にいる私たちにとってあまり関係のない日と言えば、関係はないのだが、祭り事と言うのはそわそわするものである。


「ケーキ食べたいですね。この時期はクリスマスケーキが豪華で、とても美味しそうです」


私は仕事中にケーキを思い浮かべる。疲れている頭に糖分を欲している様だ。ふわふわの生クリームに赤い苺が乗っていて……


「買いに行きましょうか?」
「まじですか!」
「もう、仕事も終わりますし」
「やった!」


鬼灯様の言葉に私は即座に反応し、ぱっと笑顔になる。鬼灯様は苦笑いをしたが、私は手の中にある書類に目を通す。早く終わらせて行かなければならない。
そして、1つ大切な事がある。


「ホールがいいです、鬼灯様」
「なまえさん、太りますよ?」


やっぱりケーキはホールケーキに限る。鬼灯様に何と言われ様とホールが良いのだ。…動けば大丈夫。
自分自身に言い聞かせて、私は仕事へと意識を戻した。




「無いですね」
「………ホール…」


現世の時間で言えば午後6時を過ぎている時間。お気に入りのケーキ屋のショーケースの中にはホールのケーキは1つも無く、カットケーキが疎らに残っているだけだった。


「無いものは仕方ありません。大人しくカットケーキで我慢して下さい」
「…はい」


私はショーケースを見て肩を落とした。鬼灯様はケーキを何点か選ぶと、店員に伝えている。こういう場でもテキパキとする鬼灯様はいつもと変わらず無表情だ。

鬼灯様がケーキを受け取り、私たちは店を出た。




街にはクリスマスソングが流れ、道行く人達は皆笑顔だ。少し浮き足立った雰囲気が、気持ちを盛り上げてくれる。私も笑顔になってしまう。


「随分、嬉しそうですね。機嫌は直ったのですか?」
「はい!ケーキが食べれれば良いのです」


雰囲気が大切です。
鬼灯様とイルミネーションがされた町並みを歩く。はぁ、と息を吐き出せば白く色づき夜空へ吸い込まれていく。その白い息を目で追っていくと、白い粒にぶつかった。


「あ、雪です!ホワイトクリスマス!」
「道理で寒いはずです」


私は夜空から降ってくる雪を眺めながら歩いた。その私の首にふわりと赤いマフラーが巻かれる。


「!」
「風邪を引きます」
「…ありがとうございます」


それは鬼灯様がしていたマフラーで、暖かなぬくもりが残っていた。鬼灯様が少し寒そうに見える。
私は鬼灯様の優しさに嬉しさを隠しきれず、マフラーに口元を埋める。口角が上がりっぱなしだ。心臓がドキドキと早い。


「鬼灯様、早く帰りましょう」
「そうですね」


私は鬼灯様の左手を掴む。きゅっと繋いだ手から鬼灯様の手の温かさが伝わって来た。雪の粒は大きくなって、ゆっくりと降り積もっていく。




白く飾られる夜

甘い、甘い、夜ですね。







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アウトー!ってな訳で乗り遅れクリスマス。あ、うん、こんなふんわりした話が好きなんだな。いつもはっきりしねぇええ

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