蝶/Acid Black Cherry






月明かりに揺れる、貴方のピアスがとても綺麗。いつもの部屋に貴方が居るだけで違う様にに見える。甘い香りが強くて、その香りに酔いしれて、何だかイヤな感じだわ。


そう、私は愛の罠にかかった蝶。


絡みつく優しさが蜘蛛の糸みたい。
愛じゃないけど、何故か貴方に一度抱かれてみたかった。







目を閉じた彼女の唇に、そっと自分の唇を近づける。触れそうで触れない距離で僕は囁く。


「君を食べてしまいたい」


それが始まりの合図。
唇を重ね合わせて、お互いを貪り合う。


あぁ、もっと。


「キレイな声を聞かせてよ」


彼女の乱れる声を、高く、快感を求める声を、僕を求める声を。

もっと聞かせてよ。


「何処に欲しいの?言ってごらん」


毒針は糸を引き、彼女のナカへと…







「ね、今日、誕生日でしょ?」
「何で知ってるんですか?」
「僕が好きな子の誕生日を忘れると思う?」


白澤様は隠し持っていたのであろう、バラの花を差し出した。ブーケ状になっていてとても可愛らしい。


「ありがとう、ございます」
「それと、プレゼントに…」


ちゅっと音を立てて唇へキスを落とされた。至近距離で見る白澤様はいつもとっても綺麗な顔をしていいる。


「ね、シよ?」


真っ直ぐな瞳で、私の瞳を縫いつけて、今度は深い、深い口づけをする。



バラの花なんてずるいわ。
どんな蝶だって花にはとまるじゃない。
愛じゃないけど、何故か貴方を信じてみたかった。

愛されていると。







長い命のなかで、白澤様との恋は泡沫。

いけないって分かっていながら、今日も糸を手繰り寄せ、愛夜取り(あやとり)


「ね、気持ちいい?」
「…あぅ…は…ぁ……」


白澤様は私の体を愛撫しながら、悪戯をする子供みたいに笑った。


(また無邪気に笑いかけて…私を無駄に喜ばせないで)


明日も、明後日も、貴方に抱かれていたい。
だって、私は、貴方の愛の罠にかかった蝶。







白澤様の部屋に、他の女の影。化粧品の香りが、私の鼻を掠めていく。
いつもの事情後、白澤様の腕の中に抱かれて優しい一時。白澤様は私の頭を優しく撫でてくれる。


「白澤様の、一番にはなれないのですか?」
「僕の一番…?」
「そうです」
「一番何てないよ。そんな事考えてる君には興味ない」


白澤様はベッドから抜け出すと、床に散らばったシャツを拾って身支度を整え始めた。


「早く帰って」


一言残して白澤様は部屋を出ていってしまった。私は床に散らばる自分の服を見て、涙が溢れてきた。


愛じゃないけど。
そう、愛じゃないけど。


貴方に捨てられた。
それが何故か辛かった。







何度も唇を重ねる度に、何度も体を合わせる度に、甘い声が出ちゃうぐらい玩ばれて。



私、貴方が好きだった。



涙が止まらないの。この気持ちに気づいてから。「痛い」のは嫌いじゃないけど、でも「痛い」と「辛い」は違うの。
他の女の子の影を見る度、心が「痛かった」
でも、今は心が「辛かった」


愛の罠にかかった私は蝶。







「私は白澤様の側に居たいんです」
「そう」
「だから…」


言葉なんか無くても、その後は分かってる。見つめ合えば、唇を重ね、白澤様はにやりと妖艶に笑う。


いけないって分かっていながら、糸を綱渡り。ここで落ちたって、渡りきったって、どちらにせよ最後は一緒。

これでいいの、一人よりはマシ…

貴方を追いかけてどこまでも堕ちていく。貴方の香りを追って。


貴方は愛さなくていいの。
私が愛してるから。







僕が女の子に声をかけるときに仕掛ける罠は二つ。

一つ。甘い甘い麝香(じゃこう)の香り。
君は香りに酔いしれて、僕に堕ちていく。

二つ。絡まったら取れない蜘蛛の糸。
僕の優しい声に、笑顔に、堕ちていく。


ほら、また一人…また一人…
僕の罠にかかったよ。






罠にかかった蝶








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※麝香(じゃこう)
甘く粉っぽい香り。興奮作用、強心作用、男性ホルモン様作用がある。中医学では生薬としても使われていたとか何とか。詳しくはググれ。

と、言う訳でAcid Black Cherryの蝶の歌詞を夢にしてみました。白澤様さてぇぇええ!!と思いながら(笑)結構、歌詞そのままなので良かったら聞いてみて下さい^^

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