蝶/Acid Black Cherry
月明かりに揺れる、貴方のピアスがとても綺麗。いつもの部屋に貴方が居るだけで違う様にに見える。甘い香りが強くて、その香りに酔いしれて、何だかイヤな感じだわ。
そう、私は愛の罠にかかった蝶。
絡みつく優しさが蜘蛛の糸みたい。
愛じゃないけど、何故か貴方に一度抱かれてみたかった。
*
目を閉じた彼女の唇に、そっと自分の唇を近づける。触れそうで触れない距離で僕は囁く。
「君を食べてしまいたい」
それが始まりの合図。
唇を重ね合わせて、お互いを貪り合う。
あぁ、もっと。
「キレイな声を聞かせてよ」
彼女の乱れる声を、高く、快感を求める声を、僕を求める声を。
もっと聞かせてよ。
「何処に欲しいの?言ってごらん」
毒針は糸を引き、彼女のナカへと…
*
「ね、今日、誕生日でしょ?」
「何で知ってるんですか?」
「僕が好きな子の誕生日を忘れると思う?」
白澤様は隠し持っていたのであろう、バラの花を差し出した。ブーケ状になっていてとても可愛らしい。
「ありがとう、ございます」
「それと、プレゼントに…」
ちゅっと音を立てて唇へキスを落とされた。至近距離で見る白澤様はいつもとっても綺麗な顔をしていいる。
「ね、シよ?」
真っ直ぐな瞳で、私の瞳を縫いつけて、今度は深い、深い口づけをする。
バラの花なんてずるいわ。
どんな蝶だって花にはとまるじゃない。
愛じゃないけど、何故か貴方を信じてみたかった。
愛されていると。
*
長い命のなかで、白澤様との恋は泡沫。
いけないって分かっていながら、今日も糸を手繰り寄せ、愛夜取り(あやとり)
「ね、気持ちいい?」
「…あぅ…は…ぁ……」
白澤様は私の体を愛撫しながら、悪戯をする子供みたいに笑った。
(また無邪気に笑いかけて…私を無駄に喜ばせないで)
明日も、明後日も、貴方に抱かれていたい。
だって、私は、貴方の愛の罠にかかった蝶。
*
白澤様の部屋に、他の女の影。化粧品の香りが、私の鼻を掠めていく。
いつもの事情後、白澤様の腕の中に抱かれて優しい一時。白澤様は私の頭を優しく撫でてくれる。
「白澤様の、一番にはなれないのですか?」
「僕の一番…?」
「そうです」
「一番何てないよ。そんな事考えてる君には興味ない」
白澤様はベッドから抜け出すと、床に散らばったシャツを拾って身支度を整え始めた。
「早く帰って」
一言残して白澤様は部屋を出ていってしまった。私は床に散らばる自分の服を見て、涙が溢れてきた。
愛じゃないけど。
そう、愛じゃないけど。
貴方に捨てられた。
それが何故か辛かった。
*
何度も唇を重ねる度に、何度も体を合わせる度に、甘い声が出ちゃうぐらい玩ばれて。
私、貴方が好きだった。
涙が止まらないの。この気持ちに気づいてから。「痛い」のは嫌いじゃないけど、でも「痛い」と「辛い」は違うの。
他の女の子の影を見る度、心が「痛かった」
でも、今は心が「辛かった」
愛の罠にかかった私は蝶。
*
「私は白澤様の側に居たいんです」
「そう」
「だから…」
言葉なんか無くても、その後は分かってる。見つめ合えば、唇を重ね、白澤様はにやりと妖艶に笑う。
いけないって分かっていながら、糸を綱渡り。ここで落ちたって、渡りきったって、どちらにせよ最後は一緒。
これでいいの、一人よりはマシ…
貴方を追いかけてどこまでも堕ちていく。貴方の香りを追って。
貴方は愛さなくていいの。
私が愛してるから。
*
僕が女の子に声をかけるときに仕掛ける罠は二つ。
一つ。甘い甘い麝香(じゃこう)の香り。
君は香りに酔いしれて、僕に堕ちていく。
二つ。絡まったら取れない蜘蛛の糸。
僕の優しい声に、笑顔に、堕ちていく。
ほら、また一人…また一人…
僕の罠にかかったよ。
罠にかかった蝶
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※麝香(じゃこう)
甘く粉っぽい香り。興奮作用、強心作用、男性ホルモン様作用がある。中医学では生薬としても使われていたとか何とか。詳しくはググれ。
と、言う訳でAcid Black Cherryの蝶の歌詞を夢にしてみました。白澤様さてぇぇええ!!と思いながら(笑)結構、歌詞そのままなので良かったら聞いてみて下さい^^