風邪を引いてしまった。

死んでからは風邪なんて無縁だったため、体がとても重い。と、いうより死んでも風邪を引くんだなと感心した。


「あ゛ー…」


軽く声を上げてみたが、ガサガサに枯れた声は誰の耳にも届かず、壁に吸収されていく。
今日の仕事は休むと閻魔様にお伝えした。鬼灯様が無理をしないか心配だ。
そんな事を考えていたら、頭が痛い。私は目を閉じて、大人しく寝ることにした。




ふと、目を開ける。時計を見ると午後1時。いつの間にかお昼の時間になっていた。その時、部屋のドアを控えめにノックする音が聞こえる。


「どうぞ…」


か細い声で返事をすると、扉を開けて入ってきたのは鬼灯様だった。


「なまえさん、調子はどうですか?」
「大丈夫です」
「…酷い声ですね」


鬼灯様は少し顔をしかめる。鬼灯様の手にはお盆があり、その上には食器が並んでいるのが見えた。


「昼食を持ってきましたよ」
「わざわざすみません」


鬼灯様はベッドの横のテーブルにお盆を乗せる。上に乗っていたのは、お粥だった。ほこほこと湯気が立ち上る。


「食べられますか?」
「はい」


私は鬼灯の持っていたスプーンを取ろうとした。しかし、鬼灯様に止められてしまう。
その行動の意図が分からず、首を傾げると鬼灯様はにこやかに言った。



「食べさせてあげますよ」
「いや、平気です」
「遠慮せずに!」


鬼灯様は私の話なんて聞かずに、お粥をスプーンに取ると、フーフーと冷ましだした。鬼灯様が薄い唇を少し尖らせている姿に、少しだけドキドキする。この顔の熱さはきっと熱のせいじゃない。


「はい、あーん」
「恥ずかしいです」
「あ、口移しの方が良いですか?」
「…スプーンが良いです」


でも、やっぱり恥ずかしくて、鬼灯様の手からスプーンを取ろうとしたが、鬼灯様は口を開けろと無言の圧力をかけてきた。「あーん」なんて可愛い事を言う鬼灯様は、自分も一緒に口を開けていることに気づいているのだろうか。

私は仕方なく口を開け、ぱくりとスプーンに食いつく。口の中に、お米と少しの塩気を感じる。


「美味しいです」
「それは良かった」


鬼灯様は次のスプーンの用意をして、またフーフーと冷ます。


「もう、自分で食べます」
「駄目です」
「子供じゃないんだから…」

「風邪を引くのは自己管理ができていないからです。それは子供でしょう?」


理屈を言われても、風邪を引いたのだから仕方ないじゃないか。私は鬼灯様をじっとりと見つめた。


「だから大人しく看病されなさい」


でも、それが鬼灯様の優しさなんだな。と思ったから、大人しく看病されてやることにした。





たまには素直に

鬼灯様、お仕事は?
あぁ、サボりです








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風邪なう。看病されたい

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