「暗闇の世界ってどんな感じなんだい?」 俺は目の前にいる未来の髪を右手に取り、くるりと指に巻き付ける。 「どんな感じかなんて分からないよ。私は目が見えるっていうのが分からない」 未来は生まれつき目が見えない。そして、体も弱かった。 白を基調とした清潔感溢れる部屋に未来はいた。 俺の大嫌いな死んだ魚の目をして、ぼんやりと外を見ていた未来に話しかけたのが始まり。 それから定期的に会いに行くようになった。 「目が見えたら、未来は最初に何が見たい?」 「そうだなぁ…」 これまでに未来が何回と考えていたであろう質問をする。即答するかと思えば未来は少し唸った。 「臨也が見たい。臨也の顔を見てお話がしたい。そしたら、もっと楽しいでしょ!」 光のない目で未来は笑った。それでも未来はどんな人より綺麗だった。 俺の鼓動が少しだけ速まる。 「じゃあ、約束しよう」 臨也は未来の手をとり、そっと口づけた。 君の瞳に俺が映る すぐ見えるようになるから、その時君はどんな顔をするのかな? ← ----- 病気系を題材にすると申し訳ない気持ちになる。 |