岸谷新羅のマンション。

新羅とは高校からの付き合いになる。特に新羅のパートナーであるセルティとは女同士、とても仲良くなった。


「臨也、最近疲れてない?」


平日の陽もまだ高い時間。セルティとの楽しいティータイム中に新羅が口を挟んできた。


「新羅が臨也の心配するとかキモッ!」
「酷いなぁ…大体、臨也の心配じゃなくて未来ちゃんの心配ね」
「…?」
「今年の風邪は感染力高いから。いつも外に出てるのは臨也だろう?疲れが出てくると、風邪引きやすいしね。未来ちゃんが風邪を引いたら、セルティが心配する」


結局、新羅の発言の行き着く先はセルティになる。もう、新羅からセルティを取ったら残るものはきっとメガネと白衣になるに違いない。
一人でうんうん、と頷いていると新羅が小さな小瓶を私に渡してきた。


「何?これ?」


中にはピンクの液体が入っていた。イチゴ味の風邪薬みたいな。


「風邪の予防薬。臨也に飲ませて。あ、でも素直に飲まないと思うから、コーヒーにでも混ぜて。寝る前の方が効果あるなぁ…」

「…ん?分かった」


新羅が少しテンション高めなのは気のせいだろうか。私は少し気になったが、小瓶をバックへとしまった。
その後、セルティがお仕事だと言うので私は臨也のマンションに帰宅した。




夜、食後のコーヒーに新羅から貰った薬を混ぜる。少しだけ飲んだが何時ものコーヒーと変わりなかった。
臨也はソファーに座ってテレビを見ているから、入れたことに気づかないだろう。


「はい、臨也」
「ありがと」


臨也にコーヒーを渡して、私は臨也の隣に座った。臨也は何時もの様にコーヒーに口をつける。


「どうしたの?そんなに見つめて」
「な、何でもないよ!」
「そ?」


臨也に見ていたことを気付かれ、慌てて目を反らす。臨也はコーヒーを飲み干すとカップをテーブルに置いて私へ質問を投げ掛けた。


「今日は出かけてたの?」
「セルティとお茶してた」
「また新羅のとこ?」
「セルティのとこ」
「一緒じゃん」
「新羅はおまけ」


簡単なやり取りだけど、一日の報告会。この時間が何となく好きだ。テレビの音はBGMと化して、私達の頭には内容は入ってこない。


「……ん、今日は疲れたかも…」


臨也は眠たそうに目を擦った。いつもはどんなに疲れていても、私の前では余裕そうにしているのに珍しい。私は臨也に手を伸ばそうとしたら、臨也は私の胸の中に倒れ込んできた。
必然的に私は後ろに倒れる事になり、ボフッと音を立ててソファーに沈んだ。


「臨也?」
「このまま寝ていい?」


ぎゅっと私を抱き締めて、小さな声で臨也は呟く。


「風邪引いちゃう…」
「未来があったかい」


臨也はもぞもぞと胸の辺りに顔を埋めているので、何だかとてもくすぐったい。私は臨也の黒い髪を撫でた。


「…癒される」
「どうしたの?臨也らしくない」
「甘えたい時だってあるんだよ」


臨也は顔を上げて、少し上へずれてきた。私と顔の位置が同じになり、ちゅっと軽い音を立てて唇を落とす。


「ずっと未来が傍に居てくれたら嬉しいな」
「いるよ、飽きるまで」
「ずっとって言ったのに」
「先に臨也が飽きそうだよね」


私の言葉に臨也は少し不服そうだ。本当に臨也はどうしたのか。いつもはこんな甘え方しないのに。臨也は私をぎゅっと抱き締めながら会話を続けている。


「ね、約束しようよ」
「何を?」
「ずっと一緒に居られるように」


臨也は私の耳元に唇を寄せ、囁く様に呟く。臨也の低音ボイスに少しくらくらする。





「俺と結婚して」







誰にも渡さないよ、
俺だけの未来でいて






後日、新羅に聞いたらあの薬が原因だったらしい。


「11月22日、良い夫婦になれると良いなと思ったんだよ。私達みたいに!」


そこでセルティの肘うちが綺麗に決まったのは言うまでもないだろう。

まぁ、新羅のお陰で臨也が言えなかった言葉が聞けたのだ。今回は感謝しよう。







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長かった!UP遅れた!
書いてる途中で長すぎて変更したから、gdgd!
本当はあんなことやこんなことを、させるつもりでした。不発!

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