「臨也!ポッキー食べよ!」


朝一でコンビニに出かけた未来の手に握られた袋にはポッキー系のお菓子が数種類。日頃からお菓子が好きな未来なので、不思議ではないが、何故ポッキーばかり?と臨也は首を傾げる。


「今日は1がいっぱいなポッキーの日だよ!11時11分にポッキーが食べたい」

「11年11月11日11時11分って事?くだらない」

「えー!すごいじゃん!」


未来はむっと頬を膨らませたが、直ぐに笑い出す。自分達のやり取りが面白かった様だ。
未来はコンビニの袋をテーブルに投げ出し、ソファーへと座る。袋から少し高めの苺チョコのついたポッキーを手にする。小分けの袋を破ると、中からは甘い香りがする。


「いっただきます!」


未来は嬉しそうにポッキーを口に含む。チョコがふんわりと口の中で溶けていく。


「棒だけ残すのが好きなんだよね」


未来はそういって器用にチョコレートを剥ぎ取った、ただの棒状のビスケットを臨也に見せた。


「汚い食べ方しないでよ」
「臨也もやんなかった?こーゆーの」
「やらないよ」
「ちなみにトッポはチョコレートだけ残したい」
「はいはい」


臨也は呆れたのか、会話の途中で資料へと視線を戻してしまった。未来は2本目のポッキーへと手を伸ばす。
ポキッと軽い音を立ててポッキーを噛み砕き、食べ終わると袋をガサガサと探り、ポキッと軽い音を立てて…と飽きることなく食べる。


「気が散るんだけど…」
「臨也も一緒に食べようよ。息抜きも必要だよ?」


未来は自分の座っているソファーの横をぽんぽんと叩き、臨也を呼ぶ。
臨也は仕事にならないな、と思ったのか大人しくその促しに答え未来の隣へ座った。


「はい、臨也!」


未来は臨也の行動に満足したのか、ポッキーを1本差し出してきた。臨也はそれを受け取ると口に含む。


「あまっ」


口の中に広がった、チョコレートの甘さに臨也は顔をしかめる。


「良くこんなに甘いのに、そんなに食べられるね」
「そんな大げさな」


臨也は口に入れたポッキーを一気に噛み砕き、飲み込む。
そして、次にスタンダードなチョコレートのポッキーをつかむと未来に向かってニーッと笑った。


「もっと美味しい食べ方教えてあげようか?」
「ん?何?何?」


臨也の言葉に興味深々で未来は食いついてきた。臨也はとても面白そうに笑いながら答える。


「未来はこれ、くわえて」
「むぐっ」


臨也は未来の口にポッキーを押し込むと反対側を自分でくわえた。臨也の顔が間近となり、反射的に未来は顔を離す。ポキッとポッキーは軽い音を立てて折れる。


「ちょっと…!」
「もう、ポッキーゲームにならないじゃないか」


未来は動揺するが、臨也はいたって普通に抗議の声を漏らす。そして次のポッキーを差し出し、にんまり笑った。


「はい、未来。くわえて」
「い、いや…です」


じりじりと未来の口にポッキーを入れようと臨也が迫る。未来は顔を背けて抵抗する。


「一緒に食べようって言ったのは未来でしょ?」
「一緒に1本のポッキーを食べようとは言ってなむぐっ」


未来が口を開いたのを見計らって臨也は未来の口にポッキーを押し込み、反対側をくわえ、未来の頭も固定した。これで逃げられないと、臨也はポッキーを噛み砕き、未来の唇へと迫る。
ポッキーはあっと言う間に無くなり、唇が触れる。ポッキーのチョコレートで甘い、甘い口付け。


「うん、美味しいね」


そして臨也は唇を離すと満足そうに微笑んだ。


「もう、来年は買ってこない…」
「それが懸命だと思うよ?」
「臨也のばーか」


未来は顔を赤くしながら、臨也に悪態をつく。
まだまだいっぱいあるポッキーの山は、ここで食べるのは危険と察しがさがさと袋へ戻していく。


「あれ?もう終わり?」
「もう、11時11分過ぎてる」


未来が気づかぬうちに楽しみにしていた11時11分は過ぎて、もうすぐ11時15分になろうとしていた。




11年11月11日11時11分

俺と君がキスをする







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世間に便乗(笑)
凄く長くなってしまった…あはは…(^ω^;)

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