「臨也、少し買い物に行ってくる」
午後3時を過ぎた頃、夕食のメニューを考えていると冷蔵庫の中に大した食材が入っていない事に気づく。
まだ時間的には間に合うので、少しだけ買い出しに行く事にした。
「あ、俺も行くよ」
臨也は先ほどからチャットをしているのか、パソコンに向かいっぱなしだったのに、私が出かける準備をして声をかけたら珍しく一緒に行くと言い出した。
「池袋なんだけど・・・」
「大丈夫、食品売場でシズちゃんになんか遭遇しないって」
「確かにそうだけど・・・」
買い物の途中で静雄に追いかけられては台無しになってしまう。しかし、臨也はついて来る気満々のようだ。
「じゃぁ、行くよ」
仕方なく私は臨也と出かける事にした。
12月になると、街はどこか忙しく、浮き足だった雰囲気に変わる。食品売場もまた然り。クリスマスの飾り付けがキラリと光り、クリスマスソングが何処からか聞こえる。
「なまえ、夕飯のメニューは何?」
「今日は寒いから鍋!」
それを聞いた臨也は自分の好きな具材をカゴの中へと放り込んでいく。見事に野菜がない。
「バランス考えてよ」
「いいじゃない。好きなの食べようよ」
臨也に何を言っても無駄だった。
私は臨也の入れたものを見ながらバランスの取れるように、野菜などをカゴに入れた。
店の外にでる頃には東の空から紺色が迫ってきていた。風も冷たくビルの間を吹き抜けていく。
「さむっ!」
私はマフラーに顔を埋め、ぶるりと震えた。
荷物は臨也が持ってくれているため、楽チンである。こう言うときは役に立つな、なんて失礼な事を思ってしまった。
「少し寄り道してもいい?」
「え、寒い。帰ろうよ」
「少しだけだから、ね?」
臨也の提案を即答で断る私。でも、臨也が私の手を掴んでくいっと引っ張るので、強くも断る事ができず、臨也の「寄り道」とやらに付き合うことにした。
「どこいくの?」
「もう少しだから」
陽はすっかり落ち、空は紺色に染まり、道沿いに建ち並ぶ店の光りが眩しい。いつもは通らない道だけに、少し新鮮な気持ちになる。
「そろそろだね・・・3、2、1」
臨也は立ち止まり、カウントダウンをすると、歩いていた道の街路樹に小さな光りが灯る。その光りは無数に集まり、街路樹を包み込む。
「わぁ!イルミネーション!」
「綺麗でしょ?」
「すっごい!こんなの知らなかった!」
基本的にこういう事に疎い私は、素直に感動する。キラキラと光るイルミネーションは私と臨也を―――この街を包み込んでいた。
「たまには寄り道もいいでしょ?」
臨也は私に笑いかけ、私もそれに答えるように笑った。
イルミネーション
あなたの喜ぶ顔がみたい
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君との世界が輝いて。