「ん、あ…」

腹部に鈍い痛みを感じた。瞼の外からは光が溢れていた。うっすらと目をあける。見慣れた天井、見慣れない布団。
がばっと上半身をお越し、辺りを確認する。

「………?」

平和島静雄は自分のいる場所が何処か、目覚めていない頭を叩きお越し考えた。間取りは自分の部屋と一緒だが、置いてある家具や、色合い、雰囲気がまるで違う。

「あ、おはようございます」

聞きなれない声が耳に入りそちらを向いた。


「誰だ?手前…」


キッチンからひょっこりと顔を出して笑う少女が目に入った。


「平和島さんの隣の部屋のみょうじなまえです。ご挨拶できてなくてすみません…」


そう言って彼女、なまえは頭を下げてお辞儀をした。

「昨日、平和島さんが部屋の前に倒れてて…手当てをしたんですが…大丈夫ですか?」
「そう、なのか…すまねぇ、迷惑かけたな」


身体中に貼られた絆創膏を見て、彼女が手当てしてくれた事が分かった。
血だらけのシャツが切れて覗いている腹部には何重にも絆創膏が貼ってあった。


「すぐご飯出来ますから…食べて下さいね!」


彼女はまた笑いキッチンへと戻って行った。ふんわりと朝食の香りが漂ってくる。
静雄はガシガシと頭をかいて、ベッドから起き上がった。


「あ…シーツ汚しちまったな…」


静雄が寝ていたベッドのシーツに赤い染みがついていた。血だらけの格好で寝ていれば当然だろう。


「ご飯できましたよー」

なまえが朝食を持って部屋へと入ってきた。スクランブルエッグにベーコンが乗り、レタスとミニトマトが色を添えている。

「すみません、大した料理できなくて…」
「いや、充分だよ。それより…」


朝食の用意をテーブルに並べるなまえの隣で、静雄は申し訳なさそうにベッドを見た。

「あ、血…本当に大丈夫ですか?」
「俺の事より、シーツが…」


なまえは静雄の心配をしたのに、静雄はシーツの心配をしていた。それが可笑しかったのか、なまえはくすくすと笑った。


「平和島さんて、面白いですね」


静雄は真面目にシーツの心配をしていたのに、なまえの反応に少しびっくりした。


「大丈夫ですよ、そんなの。それよりご飯食べましょう?」


なまえは静雄を座る様に促し、自分もその向かい側に座った。
静雄は納得しないまま、促されながら座った。




少しズレた思考力。

普通なんて良く分からない。
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